プロジェクションマッピングで神経細胞を刺激するロボット顕微鏡を開発医療技術ニュース

大阪大学は、動く観察対象を自動追跡し、特定の神経細胞をプロジェクションマッピングによって刺激するロボット顕微鏡を開発し、線虫「C.エレガンス」の複数のドーパミン細胞の性質が異なることを明らかにした。

» 2016年06月10日 08時00分 公開
[MONOist]

 大阪大学は2016年5月19日、動く観察対象を高速に自動追跡し、特定の神経細胞をプロジェクションマッピングで刺激するロボット顕微鏡「オーサカベン」を開発し、行動中の線虫の複数のドーパミン細胞の性質がそれぞれ異なることを明らかにした。同大学大学院理学研究科の木村幸太郎准教授と東北大学大学院情報科学研究科の橋本浩一教授らの共同研究チームによるもので、成果は同日、英科学誌「Scientific Reports」で公開された。

 今回、同研究チームでは、水平面上を自由に移動する生物を1/200秒単位で自動追跡しながら、蛍光によって複数の神経活動を測定し、さらに複数の神経活動をプロジェクションマッピングで1つ1つ刺激するロボット顕微鏡を開発。同顕微鏡を用いて、線虫「C.エレガンス」のドーパミン細胞の神経活動を計測した。

 C.エレガンスのドーパミン細胞は、高等動物と類似した遺伝子プログラムにより、ドーパミンを合成する性質を獲得することが知られている。そのドーパミン細胞は、頭部3カ所と尾部1カ所に存在するが、計測の結果、頭部背側の1カ所(CEPD)のドーパミン細胞だけが餌に対して強く応答した。また、プロジェクションマッピングを用いて、この細胞だけに青色光を照射して人工的に刺激したところ、餌の層に移動した時と同じ行動変化を引き起こすことに成功した。

 同成果は、ドーパミン細胞が複数の機能的グループに分かれる仕組みの解明につながることが期待できるという。さらに、同顕微鏡は、線虫以外の小型動物にも使用できるため、さまざまな小型動物を用いた「脳活動と行動の関係」の解明に寄与できるとしている。

photo ロボット顕微鏡「オーサカベン」の模式図
photo 線虫C.エレガンスのドーパミン細胞の活動の様子

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