日立製作所グループはIoT/M2M展に出展。「勝つためのIoT」をキーワードとし、同社のIoT基盤「Lumada」のユースケースを基に、製造業向けのソリューションを紹介した。
日立製作所グループは「第7回 IoT/M2M展 春」(2018年5月9〜11日、東京ビッグサイト)に出展。「勝つためのIoT(モノのインターネット)」をキーワードとし、同社のIoT基盤「Lumada」のユースケースを基に、製造業向けのソリューションを紹介した。
日立製作所グループが展開するIoT基盤「Lumada」は、データの統合、分析やシミュレーションから知見を得るソフトウェア技術などで構成される汎用性の高いIoTプラットフォームである。自社内にIT、OT、プロダクトシステム(製品)の3つを抱えていることにより、IoTによって求められるCPS(サイバーフィジカルシステム)の技術的要素の大半を自社でカバーできる他、さまざまな企業体を抱える日立グループのノウハウをソリューションに組み込んで提供できることが特徴である。
2016年5月に発表以降、社内外でのユースケースを蓄積しているが、今回のIoT/M2M展では、新たにLumadaのユースケースとして加わった日立製作所の神奈川事業所での取り組みを紹介した。
日立製作所でのLumadaの社内実践では、多品種少量生産の大みか事業所の事例が紹介されることが多かった※)。一方、サーバ関連製品などを作る神奈川事業所は少品種大量生産の工場となる。その中でIoTを活用した取り組みとして、RFIDカードと自動倉庫、無人搬送車(AGV)を組み合わせた「オンデマンド部品供給システム」や、作業指示を作業者に分かりやすくモニターで指示する「E-Assy」など9つの取り組みを推進している。
※)関連記事:リードタイムを半減、AR活用なども視野に入れる日立大みか工場の進化
取り組みのうちで成果を残しているが「人工知能による品質試験工程の最適化」である。品質試験工程で出力されるログデータを収集し、Lumadaの中核ソフトウェアの1つであるPentahoで、データの整形とビジュアル化を行う。さらにこれらのデータを基に、日立製作所のAI技術である「H」を活用してデータの相関関係を洗い出し、試験工程の最適化を行うというものである。具体的には、試験工程で重複領域などを洗い出し、試験項目を減らしても得られる結果が変わらない領域については、項目を減らしていくという取り組みを行った。
日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 営業統括本部 サービス営業推進本部 プロモーションセンター 部長代理の山川洋一氏は「製造工程における検査工程は良否判定のみに活用しており項目ごとの意味を把握することまでできていなかった。一方で検査工程は人手が必要な場合が多く、さらに年々項目が増えており、製造現場の負担になっていた。これらを解決することを目指した」と述べている。
実際に取り組んだ成果として「従来は負荷テストなどで『ここまでやらなくてもよいのではないか』と思っていたところ、AI活用した結果などでも同様の結果が得られて、負荷テストの項目や時間を削減できた。この他の成果を合わせると、検査リードタイムは約30%短縮できた」と山川氏は述べている。
「AIによる品質試験工程の最適化」については外部にも提供を進めていく方針だが、現在はまだ社内を中心とした実証を進めている段階だ。価格はクラウドでの提供で1カ月100万円程度を想定しているという。山川氏は「試算では設備動力費で1年当たり1100万円の削減効果があると考えており、中堅以下クラスの製造業でも十分成果が得られる可能性がある」と述べている。
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