3列シートの大きなボディーで「運転の楽しさ」は実現できるか乗って解説(2/3 ページ)

» 2018年03月29日 06時00分 公開
[高根英幸MONOist]

乗り心地を左右する「躍度」とは

雪上試乗会では剣淵試験場でCX-5のガソリン車を使って、操作系のチューニングの緻密さを体験した(クリックして拡大)

 安定した走行のため、i-ACTIV AWDの制御は作り込まれている。燃料の噴射量やターボの過給圧の調整、駆動トルクの配分、各車輪のブレーキ制御などを行うことで4輪のグリップ力を引き出し、車体を安定させるため、常に23種類のセンサーでセンシングを行っている。VDC(ビークルダイナミクスコントロール)との協調制御もAWDのレスポンスを高め、より高い走行性能を発揮できる。

 ドライバーがステアリングやアクセルペダルをどう扱ったか。このあたりも制御に緻密に反映させている。アクセルペダルは、踏み込んだ量だけでなく“勢い”までドライバーの要求として検知している。

 勢いというのはm/s2という単位で表される加速度だが、これは1秒ごとの速度の変化でしかないとマツダは考えている。1秒間の間にも実は勢いは細かく変化しており、加速度を微分して細かく見たものを「躍度」という。テストコースで車両に取り付けた加速度と躍度のグラフ表示を見る限り、躍度は加速度を50分の1程度の細かさにしているようだ。躍度を体験するため、マツダの冬季用テストコースである剣淵試験場(北海道上川郡剣淵町)を訪れた。

ハンドリング、加速、減速における躍度を体感。加速は制御の違い、ハンドリングや減速はドライバーの操作が躍度としてどう現れるかを確認した(左)。車両に搭載されたセンサーが加速度と躍度を検出。画像は減速時のもので、上の加速度に対し、下の躍度は細かく値が変わっているのが分かる(右)(クリックして拡大)

 現代のクルマに採用されている電子制御スロットルは、ドライバーの踏み込み方をそのままバルブの動きへと忠実に再現している訳ではない。アクセルを大きく踏み込み過ぎたり、ラフな操作をしたとしても燃費の悪化を抑えたりスムーズな走りにするためにシステムが調整してくれている。

 だが、あまりにドライバーのイメージと実際の制御が懸け離れれば、応答性が悪いと感じたりギクシャクしたりと、扱いにくく感じてしまう。ドライバーのイメージに沿わせながらも、乗りやすく燃費のいい制御を実現する上で、躍度が指標になっている。

 試乗内容は、テストコース内のワインディング路を走行し、途中の緩やかな登り坂で一時停止してから再発進することで、グリップ力やトラクション性能を確認するというもの。

 試乗車は、スロットルバルブの制御マップを変更して、パラメータを書き換えたプログラムに変更できるようにしていた。アクセルペダルを踏み込んだ量に対してスロットルバルブが開く量は変わらないが、ペダルの動きに対してスロットルバルブが開く勢いをわずかに早めた制御だ。CX-8はスロットルバルブのないディーゼルエンジンを搭載しているため、CX-5のガソリンエンジンモデルが試乗車となった。

 筆者が取材に訪れた日は、ちょうど降雪もなく、晴天だったためおあつらえ向きに滑りやすかった。標準状態では滑りやすい路面でも、i-ACTIV AWDとオールシーズンタイヤの組み合せで何の問題もなく発進できた。

雪上試乗会ではCX-5以外にもさまざまなマツダ車を試乗した。オートテスト(ジムカーナの簡易版)も行った(クリックして拡大)

 しかし、スロットルの応答性を変えた途端、空転して発進することが難しくなった。発進後に加速する際にも、段付き加速のように応答遅れが出て、操作するドライバーとしては非常に気になった。ほんのわずかなパラメータの違いだけでこれほど走りにくく、マツダが掲げる「人馬一体」が失われてしまうことを実感した。思い通りにクルマを走らせる上では、躍度などさまざまな指標を用いた緻密なチューニングが不可欠、ということなのだ。

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