世界ではRocket Lab以外にも、超小型ロケットの開発を進めているところがいくつもあるが、実際に製造して打ち上げ、地球周回に成功してみせたことで、文字通り1周も2周も先行したといえる。
日本で開発を進めているのは冒頭でも述べたISTだ。同社が目指すのは、高価で高性能な「フェラーリ」ではなく、安価で大量に作れる「スーパーカブ」。部品や材料は、なるべく既存の汎用品を利用する。特別な設備は使わず、職人的な技術も必要ない。堀江氏は「最低性能があればいい。飛びさえすればそれでいい」と言い切る。
同社として初めて宇宙空間(高度100km)への到達を目指したMOMO初号機は、2017年7月に北海道の大樹町で打ち上げられたが、通信が途絶。機体が破損したとみられており、宇宙へは届かなかった。しかし、対策を施した2号機を現在開発中で、再チャレンジは今春にも実施される見込み。成功すれば、日本の民間開発のロケットとして初の快挙になる。
MOMOは観測ロケットであり、最高高度に到達したあとはそのまま落下してくるが、同社は2020年に衛星用ロケット「ZERO」(コードネーム)の初打ち上げを計画している。開発には「まだ10〜20億円は必要」(堀江氏)とのことで、資金の調達が大きな課題。まずはMOMO2号機を成功させ、開発に弾みをつけたいところだ。
また日本では、先日、SS-520ロケット5号機が打ち上げを実施。4号機の失敗の後の再挑戦で、超小型衛星の軌道投入に成功した。わずか全長10mのロケットによる衛星打ち上げは、おそらく世界最小規模だ。
しかし、SS-520ロケットでそのまま市場に参入、という可能性はほぼない。ベースが観測ロケットのため、性能的にギリギリすぎ、搭載できる重量はわずか4kg。それに軌道の近地点高度が低すぎるため、これでは大気抵抗ですぐに地球に落下してしまう。あまり実用的とはいえない。
今回の打ち上げは、主にアビオニクスで採用された民生部品/技術の実証が目的であった。商業化は、この成果を生かした「次のロケット」になるものと思われる。
このアビオニクスの開発には、キヤノン電子が協力したという。そこで注目されるのが、同社が70%出資して設立した新世代小型ロケット開発企画という新会社の動向である。イプシロンなど固体ロケットの経験が豊富なIHIエアロスペースも出資しており、今後、商業打ち上げの事業化に乗り出す意向だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.