このように、世界で超小型ロケットの開発競争が激化しているのは、そこに大きな需要があると考えられているからだ。超小型ロケットに搭載するもの――それはもちろん超小型衛星である。
世界初の人工衛星「スプートニク1号」が誕生したのは1957年。これも超小型衛星といえるサイズなのだが、現代の超小型衛星はこれとは別の流れで考える必要がある。
スプートニク1号以降、ロケットの能力向上に合わせる形で、衛星は大型化。高性能化や多機能化が進展し、現在の主流は数トンクラスという大きさになった。しかし、その結果として、衛星は非常に高価なものとなり、冒険しにくくなった。絶対に失敗しないよう、信頼性が何よりも重視され、技術の進歩は遅く、用途も限られていた。
現代の超小型衛星のきっかけとなったのは、1998年に米国スタンフォード大学 教授のボブ・ツイッグス(Bob Twiggs)氏が提案した「カンサット」である。これは名前の通り、350mlの空き缶を使った模擬衛星。実際に宇宙に飛ばすものではないが、日本からは、東京大学と東京工業大学が参加。開発したカンサットを米国ネバダ州の砂漠で打ち上げた。
そして次に始まった計画が、1辺わずか10cmの「キューブサット」だ。こんな小さな衛星を実現できたのは、エレクトロニクスの発達により、小型かつ高性能で安価な民生部品が入手しやすくなってきたことが大きい。引き続き参加した両大学はそれぞれ衛星を開発し、2003年に打ち上げを実施、軌道上で動作が確認された。
超小型衛星は桁違いに低コストで作れるため、チャレンジしやすい。これ以降、さまざまな大学の衛星が打ち上げられ、芸術衛星など、これまでに無かったユニークなミッションも誕生した。
当初のキューブサットは教育的な側面が大きかったものの、30〜50cmサイズくらいの超小型衛星になると、性能的に、かなり実用性が出てきた。大学発ベンチャーのアクセルスペースが、ウェザーニューズから観測衛星「WNISAT-1」を受注。2013年に打ち上げたのは、新時代の幕開けといえるだろう。
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