解明したセラミックスの自己治癒機構を基に、修復期における過冷却融体をより低温で作ることができ、改変期における結晶化がしやすくなる「治癒活性相」の探索を行うこととなった。その中で、航空機エンジンのタービンにセラミックスを適用する際に求められる、1000℃付近で10分程度で自己治癒するという目標に合致する治癒活性相として選んだのがMnO(酸化マンガン)である。
セラミックスへのMnOの添加については、液相焼結という手法を用いて、セラミックの亀裂が入りやすいAl2O3の粒界やAl2O3とSiCの界面に限定。体積%で0.2%程度の微量でも効果を発揮することを確認した。「参考にしたのは人間の骨の構造だ。骨の中では、骨細胞を結ぶ体液輸送ネットワークが張り巡らされている。MnOは、この体液輸送ネットワークに見立てて添加した」(長田氏)という。
そして、体積%で0.2%のMnOを添加した自己修復セラミックスは、1000℃の環境下で約10分で自己治癒するという結果が得られた。強度についても、最初の時点の三点曲げ強度が1000MPaの場合、亀裂が入ると強度が200Mpaまで落ちるが、約10分で自己治癒を完了し800M〜900MPaまで強度を回復した。また、体積%で1%のMnOを添加した場合には、約1分で自己治癒したという。
長田氏は「今回の研究成果は、治癒活性相に用いる材料によって、自己治癒する温度や速度を設計できることを示せた点に意味がある。軽量化という意味では、航空機エンジンだけでなく、自動車エンジンで特に高温になる排気系などにも適用できる可能性がある」産業界での実用化を加速するために、組成、組織、使用条件から治癒速度を予測できる計算プラットフォームの開発も進めている」と述べている。
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