CFRPなどの複合材料は内部構造が複雑なため、分子スケールから考慮しなければ正確にシミュレーションすることは難しい。東京理科大学の松崎亮介氏が、ダッソーのカンファレンスでその取り組みについて語った。
2016年10月28日にダッソー・システムズのユーザーイベント「2016 SIMULIA Community Conference Japan」が開催された。その中で東京理科大学 理工学部 機械工学科 講師の松崎亮介氏がGeneral Sessionに登壇し、「炭素繊維複合材料におけるマルチスケール解析:分子シミュレーションから有限要素法まで」のタイトルで講演した。
近年注目を集めるCFRP(Carbon fiber reinforced plastics、炭素繊維強化プラスチック)だが、成形工程は複雑で、さまざまな不整も発生する。複合材料のため既存のシミュレーションでは対応しにくいことから、松崎氏はマルチスケール解析に取り組んでいる。講演では、有限要素法をベースに繊維1本から考慮した3段階のマルチスケール解析に続いて、さらに小さい分子シミュレーションから有限要素法へ受け渡した事例を紹介した。またCFRPを3Dプリントする研究についても説明した。
松崎氏ははじめに、JAXAと取り組んでいる縫合積層板のマルチスケール解析を紹介した。CFRPは強度、剛性に優れた材料で、通常は繊維方向を変えながら何層にも積層し、型によって成形される。縫合積層板は、重ねた層がはがれるのを防止するために縫合糸で縫い合わせたものである。成形、縫合の過程で繊維の含有率のばらつきや繊維束のうねり、ずれ、ボイドなどの不整が生じるため、これらを考慮したシミュレーションを行うには、ミクロスケールからマクロスケールまで特性を追っていくことが必要になる。松崎氏はスケールをミクロ、メゾ、マクロの3つに分け、境界条件をミクロスケールから受け渡すマルチスケール解析を行った。全てのスケールにおいてAbaqusを使用した。
解析のフローは次のようになる。ミクロスケールでは、メゾスケールにおいて使うための複合材料の物性を得る。まず繊維の体積含有率をX線CT画像によって取得し、モデル化する。そして均質化法により遷移と樹脂の複合材料としての材料特性を得た。縫合糸も紡績された糸と樹脂からなるため、画像からモデル化し、複合材料として物性を出した。
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