デジタルツインを実現するCAEの真価

CFRPのマルチスケール解析で分子から構造まで、3DプリントもCAEイベントリポート(3/4 ページ)

» 2016年11月11日 14時30分 公開
[加藤まどみMONOist]

 炭素繊維については、主成分はグラファイトで表面はグラフェンとしている。

 分子動力学法は古典力学をベースに分子間のポテンシャルエネルギーを定義する。ここではレナード・ジョーンズの分子間力を表すモデルを使っている。

 エポキシ樹脂のモデルを直接作ることは難しい。エポキシは主剤と硬化剤の化学反応により架橋構造を作り、複雑なネットワークを持つからだ。そこで、この化学反応についても数値シミュレーションしてエポキシ樹脂のモデリングを行った。反応については、お互い反応する場所を決めておき、ある距離以下に近づくとお互い反応して分子同士が結合するモデルとし、反応率が70%になるよう調整した。

図:樹脂の硬化シミュレーション

 図のようにグラフェン4層とエポキシ樹脂を用意し、エポキシ樹脂の右側を固定して引っ張るシミュレーションを行った。なお変位量は2nm、引張速度は毎秒10mで、実験オーダーと比較して非常に小さくなっている。シミュレーションでは図のように、エポキシ樹脂内部で破断する様子が確認された。想定していた界面の様子ではなかったが、今回はこの値を樹脂と繊維の界面の粘着要素モデルの値として使用した。

図:引張におけるシミュレーション

 先述した粘着要素の3角形のグラフとみられるような変形をすることが確認されたため、有限要素法でも3角形に沿った物性値を入力した。上下に引っ張った解析結果が図になる。応力ひずみの最終強度も見え、複合性も出ており、ミクロスケールの物性から界面剥離までを考慮したシミュレーションを一通り行うことができた。

図:FEM解析結果。境界にすき間が開くのが分かる。

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