名古屋大学が、機械や電気による駆動を必要としない、自立型の「人工膵臓」を開発した。この人工膵臓は、健常および糖尿病マウスにおいて3週間以上持続して、糖代謝を良好に制御した。従来の機械型膵臓に比べ、安価で使用負担も軽減する。
名古屋大学は2017年11月24日、機械や電気による駆動を必要としない、自立型の「人工膵臓」を開発したと発表した。同大学環境医学研究所の菅波孝祥教授、田中都助教、東京医科歯科大学生体材料工学研究所の松元亮准教授らの共同研究グループによるもので、成果は同月22日に国際科学誌「Science Advances」電子版で公開された。
この人工膵臓は、変性による不安定性や毒性が避けられないタンパク質を基材とせず、合成材料のみで作成している。グルコースと可逆的に結合するボロン酸を高分子ゲルに化学的に組み込み、1本のシリコンカテーテルに搭載した。連続的な血糖値検知と血糖値変動に応答した拡散制御からなるフィードバック機構により「クローズドループ型」でインスリンを供給する。カテーテルであるため皮下挿入も容易だ。
同人工膵臓を、健常および糖尿病モデルマウスの皮下に留置したところ、自立型インスリン供給デバイスとして機能し、1型、2型糖尿病のいずれの病態においても3週間以上の持続性を持って、糖代謝を良好に制御することを確認した。
従来の機械型膵臓には、患者に及ぼす身体的、心理的負担やメンテナンスの必要性、コスト面など多くの課題があった。今回開発された人工膵臓は、機械型よりも安価で使用負担が軽減されるため、今後は臨床応用へ向けた開発研究が期待される。
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