2050年には世界人口が100億人を超えるという予測がある。その中で、先進国の都市部はインフラが老朽化しており、新興国のインフラは整備が進んでいない。にもかかわらず、建築や建設のプロセスは使用する材料の30%を廃棄するなど無駄が多い。この問題を解決できたとしても、あと33年間で100億人の需要を満たすには、これから1日当たり1000個もの建物を建設する必要があるが、現在の建築・建設能力では難しい。
アナグノスト氏は「このような世界で『MORE』は不可避であるとともに、『MORE』が多くの課題をもたらすことも確かだ。自動化は、この不可避な『MORE』を解決する上で重要な役割を果たす。より多く(MORE)、より良い(BETTER)ことを、より少ない(LESS)影響で実践するには新たな自動化が不可欠だ」と述べる。
ただし、産業(革命)の時代からデジタルの時代、そしてAIやIoT(モノのインターネット)によってもたらされるといわれる機械の時代(Machine Age)へ移行する際には大きなギャップが生まれてしまう。「このギャップにおいて、古いスキルは将来必要なスキルではなくなる。これら将来的なスキルにアクセスしやすい人にとっては『機会に向けた跳躍』になるが、そうではない人にとっては『恐怖の谷』になる」(アナグノスト氏)。
そして自動化の新たな時代で成功するための要素として「適応性(Adaptability)」「弾力性(Resiliency)」「コミュニティー(Community)」の3つを挙げた。まず「適応性」はスキルを進化させ、新たなスキルを学ぶことだ。「弾力性」は、新たな技術が自身のビジネスを破壊し始めたときに、その事態を打開する強い意志を持つこと。そして「コミュニティー」は人々の結び付きになる。
アナグノスト氏は「オートデスクは自動化によって単純に仕事をなくしたいとは考えていない。自動化の技術と人間が一緒になることで、自動化の技術単独でやれることよりも多くのことができると信じているからだ。そのために『適応性』『弾力性』『コミュニティー』のための取り組みを推進していく」と強調する。
まず「適応性」については毎年開催している「Autodesk University」における情報提供を挙げた。新たな自動化によって起こり得る未来を、講演や展示を通して参加者に示していくという。「弾力性」では、新たな自動化に対応するために必要な職業訓練やスキル習得のため支援を目的とした基金を立ち上げた。『コミュニティー』については、新たな自動化技術を誰もが利用できるようにするためのオープンな開発プラットフォームである「Forge」を挙げた。
アナグノスト氏は「機械の時代に向けたギャップを、機械に向けた跳躍と見るか、恐怖の谷と見るかにかかわらず、当社は誰もが必要な時に新たな技術を提供できるようにしていく」と述べ、講演を締めくくった。
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