派手さに釣られてはいけない。
「このデモンストレーションの特徴は、量産中のチップで動いていることなんですよ」
いつだったか、何年も前の展示会で、どこかの企業の説明員の方がそう話していました。コックピットのデモンストレーションだったと思います。その時は、そのアピールにいまいちピンと来ませんでした。
新人の頃に、展示会の取材のルールを幾つか教わりました。「いつから量産するのか」「供給先や搭載モデルは決まっているのか」「従来の製品や他社の製品と比較して何が優れているのか」「燃費向上や軽量化に効果がある場合は、何パーセント改善できるのか」……そうしたポイントをもらさず聞いてこい、というルールです。
どれかが欠けるとニュース記事としてはランクが下がるのです。他に重要な質問項目としては「量産の課題や、車載用としての品質や耐久性をどうクリアするか」というものもあります。
記者として関心を持つべきは、何十万台、何百万台という実物のクルマに実際に載って走るかどうかなのです。もちろん、1点モノの試作品や、裏でコンピュータが動いているようなデモンストレーションも量産に向けた道のりの一部ですから、意味がないわけではありません。新人の頃に教わった展示会取材の心得は、そういう意図のものだったのだろうと最近になって腑に落ちました。
自動運転車も「裏でコンピュータが動いているようなデモンストレーション」の1つだったといえます。試作車のトランクにコンピュータが満載になっているのを見たことがあるのではないでしょうか。
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