NECでは「Industrial IoT」を推進する中で、IoTを工場で活用することで得られる具体的な価値として「KPI(重要業績評価指標)の管理」「異常の把握」「効率化」の3つを示している。KPI管理などにおいてはダッシュボードなどさまざまな「見える化」ツールを展開してきたが、今回はこれらについても現実的な方向で進化している。
「製造の見える化」については、各種データを取得できれば、データの変換や整形などを経て一定のフォーマットに落とし込めば見られるようにはなる。ただ、従来は逆に情報過多で「誰が、どのように使うのか」の見極めが難しかった。今回はある程度これらの整理を行い、主に経営層に向けては異常事態だけを示す「サプライチェーン以上管理」を提案。KPIとの乖離(かいり)が大きくなった状況を「異常」と判断し、その状況を示すとともに、それらが発生したいきさつや対策などを時系列に示すことなどが可能だ。
さらに、工場長や製品事業を取りまとめる事業部長クラスには、グローバルの各工場の生産指標などを一括管理し、各工程の課題などをドリルダウンできる「NEC IoT WebPortal」を提案する。
NEC 第一製造業ソリューション事業部 バリュークリエイション部長の関行秀氏は「情報の見える化には、誰にどの情報を発信するかが重要だ。社内外で実証を進めてきたことで整理ができてきた」と述べている。
スマートフォンをベースに人の作業を管理し支援するソリューションなども紹介した。設備はデータを発信し続けているために取得する仕組みができれば、管理などを行える。一方でデータ化が難しいのが人の作業である。従来はストップウォッチやカメラなどを使って、人の作業管理を行うケースが多かったが、今回NECではスマートフォンと音声認識技術を使って、人の作業管理と支援を行う仕組みを紹介した。
NECの自社工場で行った実践事例では、基板実装ラインの段取りのナビゲーションを実施。生産計画や設備稼働と同期した形で段取りのタイミングをスマートフォンに通知する。その通知を受けて、まず作業員は移動し、到着すると「到着」とスマートフォンに向かって話す。その音声を認識して、システムが次の指示を出し、その結果を作業員が音声で入力していくという仕組みだ。作業を支援するとともに、作業時間の把握などを負担なく実現できるのが利点である。NECでは実際に段取り替え時間の40%削減につながったという。
関氏は「こうしたソリューションの導入で難しいのが、現場への押し付けにならないこと。共に価値を生み出す仕組みは何かを考えて作りこんできた。的確に活用できれば、大きな成果につながる」と述べている。
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