特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

AIとIoTの活用はモノづくり革新の現実解へ、NECが導入事例など成果を訴求スマートファクトリー(1/2 ページ)

NECは、ユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」において、自社での実践事例と多くの導入事例などをもとに、現実感の増したスマートモノづくりソリューションをアピールした。

» 2017年11月10日 14時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 NECはユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」(東京国際フォーラム、2017年11月9〜10日)において、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)によるモノづくり革新を実現する「NEC Industrial IoT」など、スマートモノづくりソリューションが現実味を帯びている状況を訴えた。

photo 「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」における製造業向けソリューションのゾーン

「NEC Industrial IoT」が現実的な解決策に

 NECでは2015年に「NEC Industrial IoT」を発表し製造業向けのIoT活用を体系的に提案していく方針を発表。以前から取り組んできた製造業支援プログラム「ものづくり共創プログラム」などをベースに「製造業がIoTを活用して新たな価値を得るために何が必要か」をコミュニティー活動などを通じて明らかにし、それに対応するソリューションなどを提案してきた。

 「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」では、これらの成果として、個々のソリューションが進化し、現実的な課題解決に役立ちつつある現状を紹介するとともに、自社実践の成果や導入事例について紹介した。

 1つの成果として紹介されたのが、AI(人工知能)を活用した住友電気工業の検査省力化の事例である。住友電気工業は自動車用部品を扱っており、品質検査は重要な工程である。しかし、同工程で検査を担う熟練技術者の高齢化や引退などで人材不足の問題が生じており、これらの作業負荷を軽減するとともに技術承継を実現するために、検査工程をAIで省力化する目視検査ソリューション「AI Visual Inspection」を導入したという。

 「AI Visual Inspection」は、製造現場の検査工程にある製品を撮影し、撮影した画像データをNECのIoT基盤で構築したクラウド内に保存。この画像データを用いてクラウド側のAIが、製品の良品および不良品の特徴量を自動的に抽出、分析(学習)し、この結果から良品と不良品を判定するモデルを作成する。このモデルを現場の端末に配信し、モデルに基づいて製品の良品と不良品の判定を1個数秒程度で行うというものである。ポイントは撮影した画像を細切れにして判断していることだ。傷やはがれなど不良の種類はさまざまなものがあり、これらの形状もさまざまなものが存在するが、細かく分割して個々の画像を分析した場合、パターンが限定される。

 AI活用には、ブラックボックス化の課題が指摘されるが、この細かく分割した画像を分析するという手法により、NG判定とした部分を作業員に示すことができ、生産プロセスの改善などにもつなげられるという。

 会場では、デンソーウェーブの協働ロボット2台を使い、NECのルーター製品の各部を撮影し、その画像をAIで分析することで不具合を見つけるというデモも行った。

photophoto ロボット2台とカメラを使い画像を作成するデモ(左)と撮影した画像からAI活用で不具合を発見しタブレット端末で表示する様子(右)(クリックで拡大)

BTO製品のAI需要予測で在庫を45%削減

 NEC内の実証で成果を発揮し今後、自社内への本格展開を実施するとともに、2017年度中に外販に乗り出すのが、AIによる需要予測ソリューションである。

 NECプラットフォームズ甲府事業所におけるIAサーバ生産は、BTO(Build To Order)品であるため、需要予測をもとにした各部材の一定量の在庫が必須となる。ただし、需要予測が外れることも多いため、足の長い部材などを必要以上に持ちすぎ、在庫量が増えるという状況があった。これに対し、NECのAI技術群「NEC the WISE」の1つである異種混合学習技術による需要予測AI(人工知能)を活用。月々の部品在庫を金額換算で最大45%削減できるという実証結果を得たという。

 異種混合学習技術とは、NECの中央研究所が開発した、ビッグデータに混在するデータ同士の関連性から、多数の規則性を自動で発見し、分析するデータに応じて参照する規則を自動で切り替える技術。これにより、単一の規則性のみを発見し参照する従来の機械学習では分析が困難な、状況に応じて規則性が変化するデータでも、高精度な予測や異常検出が可能となるという。

 以前には、NECフィールディングの補修用部品の需要予測で成果を出しており、今回は製造領域に適用した。予測を導く学習としては、IAサーバの過去売上実績などの社内データやマクロ経済指数、社会的なイベント情報などの社外データを学習データとした。

 今回、実証で結果が得られたことで、2017年11月からはNECプラットフォームズ甲府事業所では本格的に実用する他、2017年度中には外部提供も開始するとしている。

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