日々の監視測定方法には大きく分けて次の2つがある。
後者は管理監督者が現場を歩き、作業者の顔つきや現場の整理整頓状況などを細かくチェックすることにより、改善のネタを探すことになるが、筆者はこちらの方が前者よりも効果が大きいと信じている。本田宗一郎氏言うところの「三現主義」につながるのだが、例えば工場長が現場を歩くと、作業者から声をかけられて「ここがやりにくい、あそこが危ない」などの情報が寄せられる。これがあるべき姿だ。工場長が歩くと、作業者は皆、話しかけられないように肩をすくめ、もし「何か困ったことはないか?」と工場長に尋ねられても「いいえ、特にないです」という答えしか返ってこないようでは工場長失格だ。良い情報よりも悪い情報がしっかり上がってくる現場の雰囲気。それが筆者の言うところの「明るく楽しい現場」だ。工場長の仕事はそこで働く全ての人たちが気持ちよく仕事ができる環境を作ることだ。設備、福利厚生はもちろん、良好な人間関係、雰囲気作りこそが良いモノづくりに必要な要素だ。はっきり言おう、「鬼軍曹的工場長は現場を去れ!」と。
前項の日々の監視測定方法1だが、IoTはここに活用すべきだ。生産にかかわる指標と一言でいっても、これまた数えきれないほどあるだろう。主なところでは生産管理、品質管理、労務人事管理だが、それら3つの中にもこれまた数えきれない指標がある。
筆者が一番問題視をしているのがリアルタイム性だ。現状ではどうしてもチェックシートが多用され、それを事後に集計という形が主流だが、次の大きな問題点を抱えている(図5)。
これを、生産現場でチェックシートに記入するのではなく、例えばデジタルノギスで測定した値をリアルタイムにサーバに書き込み、瞬時に統計処理し問題があればアラートを出す。こういう仕組みであれば、書き忘れ、書き間違い、入力間違い、処置遅れ全てのリスクに対応できるだろう。そもそもチェックシートへの記入、表計算ソフトへの入力作業は付加価値を生まないではないか。そういう作業はIoTでリアルタイム化かつ省力化する。これ自体が現場の改善活動につながる。
今や生産計画のためのツールは百花繚乱、ここを鉛筆なめなめアナログ作業という企業は少数派だろう。問題はその計画に対しての実績収集、ここがまだまだ弱い企業が多い。「作業指示票の数を数えてバッチ処理」ならまだしも、「取りあえず納期に間に合っているからいいだろう」では管理とはいえない。PDCAのPDでいったん途切れて、タイムラグがあってCA。これでは改善は進みにくい。
最近ではタブレット端末を使った実績収集システムも安価に発売されている。しかしタブレット端末にタップや入力することも付加価値を生む作業ではない。IoTを活用し付加価値作業そのものから実績を収集する。これが筆者の考える実績収集システムだ。
次回はもう少し具体的に改善ネタ探し、そして生産管理へのIoT活用を論じていこう。
関伸一(せき・しんいち) 関ものづくり研究所 代表
専門である機械工学および統計学を基盤として、品質向上を切り口に現場の改善を中心とした業務に携わる。ローランド ディー. ジー. では、改善業務の集大成として考案した「デジタル屋台生産システム」で、大型インクジェットプリンタなどの大規模アセンブリを完全一人完結組み立てを行い、品質/生産性/作業者のモチベーション向上を実現した。ISO9001/14001マネジメントシステムにも精通し、実務改善に寄与するマネジメントシステムの構築に精力的に取り組み、その延長線上として労働安全衛生を含むリスクマネジメントシステムの構築も成し遂げている。
現在、関ものづくり研究所 代表として現場改善のコンサルティングに従事する傍ら、各地の中小企業向けセミナー講師としても活躍。静岡大学工学部大学院客員教授として教鞭をにぎる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.