これらの新たなコンセプトとともに、モノづくり面でも新たな挑戦を進めた。配送トラックの開発において、重要になるのが車両をいかに軽量化するのかという点である。トラックなどでは、車両の重量と荷物の積載重量を合計した車両総重量(GVW)は規制で定められており、より多くの荷物を運ぶためには、車両重量を軽くしなければならないからだ。
今回の「FD-SI」は、従来のモノづくりで生産方法などを考慮した設計など、既存の考え方をいったん忘れ、ストレスフリーを実現するという基本コンセプトのもと、必要な形状や軽量化策などを考えていった。
林氏は「今までであれば、金型でどう起こすのかや、成形しやすいようにどう設計するのかということが形状を決めてきた面があったが、3Dプリンタなどの積層造形技術が進化する中で、固定概念にしばられては必要なものは見えてこない。そういう意味で軽量化を見据えつつ、形状設計としてもさまざまなチャレンジを行った」と強調する。
1つのポイントが、外形のアウターシェルとインナーシェルを分離し中空型のデザインとしている点だ。軽量化を実現するための発想だが「アウターシェルには強度の強い素材を用いて、別素材のものを組み合わせた形を想定する」(林氏)。また、インナーシェルとアウターシェルの接合部分についても、積層造形技術などで一体成型するイメージの形状としたという。
これらの設計において強度計算などを突き詰めたわけではないが「今後のモノづくりを考えた場合のデザイン面での考え方で大きなヒントになった」と林氏は述べている。
「FD-SI」についても、このまま製品化を考えたものではなく、あくまでもデザインコンセプトである。ただ「いすゞ自動車が描きたい配送や物流の温かみや優しさのようなものを形状として表現できたと考えている。『宅配は将来的にドローン(無人航空機)に置き換わる』とする声もあるが、いすゞ自動車がドローンをやる発想はない。荷物を玄関や庭に置き去りにするような配送には心がない。手で運ぶ温かみのようなものを伝えられる物流や配送の価値の訴えていきたい」と林氏は述べている。
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