調査会社のIHS Markit Technologyが次世代通信技術である5Gに関わる今後の市場動向について解説。全てのモノがつながるIoT時代において、基地局当たりの接続機器数が4Gの100倍になることが5Gの最も重要な機能だと強調するとともに、IoT先進国を目指す中国が5Gの開発をけん引する可能性が高いと指摘した。【訂正】
調査会社のIHS Markit Technologyは2017年7月10日、東京都内で記者説明会を開催。次世代通信技術である5Gに関わる今後の市場動向について解説した。
現行の携帯電話通信技術である4G/LTEを発展拡大させた次世代規格が5Gだ。国際電気通信連合(ITU)において規格策定が進んでおり、2017年内に技術性能要件や評価基準を取りまとめた後、2019年にかけて5G無線インタフェース仕様を受け付けて、2020年には国際標準仕様を勧告するスケジュールになっている。
5Gは4Gと比べて、最高通信速度が10倍、消費電力が2分の1〜3分の1、遅延時間が10分の1、基地局当たりの接続機器数が100倍、システム容量が1000倍となり、高速移動体での通信能力も時速500kmまで対応するという。
IHS Markit Technology 日本調査部 部長の南川明氏は「5Gが必要になる理由はIoT(モノのインターネット)に他ならない。全てのモノがIoTとしてつながると、データ通信の量もさることながら、1基の携帯電話基地局につなげるデバイスの数も大幅に増える。現在の3G、4Gの携帯電話網では百数十億台しかつなげられないが、スマートフォンを含めた携帯電話機は既に約90億台が普及している。そういう意味で、5Gで最も重要な機能は、基地局当たりの接続機器数が100倍になることだといえるだろう」と強調する。
このITUによる5Gのロードマップよりも速いピッチで5Gの整備を進めようとしているのが中国だ。南川氏は、「中国は2050年までに世界一の経済大国、世界一の軍事大国になることを目指している。しかしこの目標に対して、従来通り“世界の工場”のままでは、労働賃金の高騰による工場の流出を考慮すると産業競争力は低下することになる。また環境問題への対応も進められない。これらの問題を一気に解決するため、中国はIoT先進国になろうとしている。5Gのインフラ整備はIoTのベースを構築するもので、2017〜2018年に実証実験を行い、2020年には商用化をする計画で、ITUの計画より前倒しになっている。そして2020年までの5Gへの投資額は5兆円にのぼる」と説明する。
そして、5Gのインフラ整備の後は、2025年に電気自動車+自動運転、2030年にIoTを活用したスマートシティーの実現を目指す。「電気自動車シフトを2025年までに進めつつ、現在は日米欧に比べて緩いCO2規制を、一気に最も厳しいレベルの欧州並みにする計画だ」(南川氏)。さらに、IoTを活用したスマート工場の取り組みも2017年から始まったという。
南川氏は「IoTは欧米が進んでいるというが、中国の力の入れようはかなりのものだ。5Gのインフラ整備で先行することで、ITUにおける規格策定に影響を与える可能性もある」と述べた。
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