ロームはシンガポール科学技術研究庁のマイクロエレクトロニクス研究所と共同で、次世代工場向けにセンサーノード上で装置の異常を検知する組み込みAIチップの研究を行うことを発表した。
ロームは2017年5月18日、センサーノード上で装置の異常を検知する次世代工場向けのAI(人工知能)チップについて、シンガポール科学技術研究庁のマイクロエレクトロニクス研究所(IME)と共同研究を行うことで合意したと発表した。センサーからのデータをその場で処理し、異常を検知した際にその結果をサーバに送る組み込みAIチップを研究する。
従来装置の異常検知は、装置内のPCやサーバに複数のセンサーからの大量の情報を送信して処理していた。同AIチップでは、半導体チップに異常検知アルゴリズムを搭載し、センサーノード内でセンサー情報を処理する。これにより、システム全体の消費電力を低減し、汎用性の高い異常検知機能を提供する。
同研究では、IMEとロームが得意とするアナログ回路を駆使した半導体回路技術に、工場で実証されたロームのAIを用いた解析アルゴリズムを組み合わせてチップに実装する。センサーノードで高度な処理が可能になるため、無線通信によるネットワーク構築を容易にし、サーバの負荷を軽減できる。
また、ロームが持つセンサーや無線モジュール、バッテリーレスの通信技術「EnOcean」と組み合わせれば、センサーノードをさまざまな箇所にワイヤレスで設置可能になる。
製造業の工場では近年、装置の異常をあらかじめ検知して事前に修理や代替準備などを行う予兆保全が広まりつつある。予兆保全には各種センサー、センサーノード、無線モジュール、ソフトウェアなどIoT(モノのインターネット)技術が広く使用され、特にソフトウェアの領域では従来の統計処理に加えて、AIに由来する技術も導入されている。しかし一方で、こうしたソフトウェアの成果を活用するために必要な通信速度が足りず、今後増え続けるセンサーの数に対応できないという課題があった。
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