古くて新しい「LTE Cat.1」が「NB-IoT」と「Cat.M1」の穴を埋めるIoT観測所(31)(2/2 ページ)

» 2017年03月31日 11時00分 公開
[大原雄介MONOist]
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「価格が上がってもいいからもう少し性能が欲しい」というニーズに対応

 Cat.0は、Cat.1の帯域をさらに10分の1に削った、いわば「お手軽仕様」であって、これにより低価格なモデムやデータ通信プランが提供できると考えたのだろう。しかし、うまくいかなかったという話は連載第29回で紹介した通り。結果、「LTE Cat.M1」という仕様が策定され、現在はこちらでの普及が始まろうとしている。

 ただその一方で、「Cat.0/Cat.M1よりは価格が上がってもいいから、もう少し性能が欲しい」というニーズも確実に存在する。例えばCat.M1に関しては、連載第29回で自動車向けソリューションの例を挙げたが、カーシェアの様に間欠的に通信する用途ならこれでも十分である。

 ところが、同じ自動車向けであってもトラックやタクシーなどの運行管理向けには、Cat.M1だとレイテンシ(遅延時間)が大きすぎるし、高速移動時のハンドオーバーが厳しいという側面もある。あるいは、離れた拠点に置かれた監視カメラやデジタルサイネージなどでは、Cat.M1では転送速度そのものが結構厳しいし、支払システムとかスマートエナジーのゲートウェイなどでは逆にレイテンシがCat.M1のままでは厳しいことになる。

 こうした用途のユーザーからは「Cat.M1よりもコストが掛かっても良いから、要求を満たす性能が欲しい」というリクエストが出ることになる。従来だと、これらの用途には3Gがそのまま使われており、昨今はこれがLTEに切り替わりつつあるが、企業向けプランを使えば多少安くなるとはいえ、通常のLTEは性能過剰であって、一方3Gに関しては次第にLTEへの切り替えが進んでいるので長期的な利用にやや不安が残るし、こちらはさらに性能が低い。このため、機能の最低レベルを下げずに、もう少し安価なソリューションが必要というニーズが出てきたわけだ。

「Calliope」のイメージ画像 「Calliope」のイメージ画像 出典:Sequans Communications

 そんなこともあってか、2015年頃からぼちぼちと、Cat.1に対応したモデムや、Cat.1を利用したサービス/トライアルが始まりつつある。筆者が知る限り、一番早期にモデムを提供開始したのはフランスSequans Communicationsのチップセット「Calliope」ではないかと思う。同チップセットは2016年3月にNTTドコモの相互運用試験を完了している※)

※)関連記事:SequansのLTE Cat1チップ、ドコモ網で運用成功

 また、オランダGemaltoの「Cinterion ELS31」は2015年9月に発表されているが、このELS31の日本向け製品と思われる「ELS31J」と、派生型と思われる「ELS51J」が2016年6月に、やはりNTTドコモの相互接続性試験を完了している。

 あとは、u-bloxがやはり独自のCat.1対応モジュールを2016年11月に発表しているし、2016年7月には太陽誘電とソフトバンク、Altair Semiconductorが共同でCat.1モジュールを発表している。変わったところでは、NimbeLinkがVerizon専用ではあるが、やはり認証済みモジュールを2016年4月に発売しているなど、モデムの側も次第にラインアップが充実してきている。

 サービスの側も同様だ。例えばレンジャーシステムズは2016年12月から、NTTドコモ/ソフトバンクのCat.1ネットワークに対応したゲートウェイの提供とトライアルを開始しているし、ソフトバンクは2016年10月から6カ月間、東京ガスと共同でガスの消し忘れ見守りサービスのトライアルをCat.1ネットワークを利用して行っている。

 現状はまだ広く一般にサービスが始まったという状態ではないが、レンジャーシステムのリリースにもあるようにNTTドコモに関しては回線サービスも提供されるとあるから、そう遠くない時期に広くサービスが開始されても不思議ではない。

 「NB-IoT」こと「LTE Cat.NB1」とCat.M1、そして今回説明したCat.1の3種類の規格が用意されたことで、3GPPベースのIoT向け回線サービスが一通りそろった形になる。アプリケーションの要求やコストを勘案して適切なサービスを選べる、という状況に向けての準備が整ってきたのは、喜ばしいことであろう。

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