製造現場のプロセス自動化や品質向上に役立つマシンビジョンの基礎知識をお伝えする本連載。第1回は、マシンビジョンとは何かを解説するとともに利点について紹介する。
マシンビジョンとは、画像の取り込みと処理に基づいて機器を動作させるシステムである。Automated Imaging Association(AIA)によると、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた産業用および非産業用アプリケーション全てを含むものだとされている。産業用コンピュータビジョンで使用されているアルゴリズムやアプローチの多くは、研究用途や教育用途および政治用途や軍事用途などのコンピュータビジョンアプリケーションのものと同じだが、制約条件に違いがある。
産業用ビジョンシステムは、研究用途や教育用途のビジョンシステムと比べ、より高いロバスト性、信頼性、安定性を要求される。一方で、政治用途や軍事用途で使用されているものよりも、コストが低く抑えられている。つまり、産業用マシンビジョンは低コストで、許容可能な精度を持ち、ロバスト性、信頼性が高く、丈夫で温度安定性に優れていることを意味している。
マシンビジョンシステムは、特殊な光学系を搭載した産業用カメラ内部の保護されたデジタルセンサーを利用して、画像を取り込む。これらをコンピュータのハードウェアとソフトウェアが、さまざまな特性の処理を行い分析し測定結果を生み出す。
醸造所で使用されている充填(じゅうてん)レベル検査システムを例に考えてみよう(図1)。
ビール瓶が検査用センサーを通過すると、ビジョンシステムが起動し、ストロボがたかれ、瓶の写真が撮影される。撮影された写真は画像としてメモリに格納され、その後、ビジョンソフトウェアがこの画像を処理または分析し、瓶の充填レベルに従って合否を判定する。
充填の不十分な瓶(不合格)を検知すると、システムは進路切り替え器にその瓶をリジェクトするよう信号を送る。オペレータのディスプレイには、リジェクトされた瓶と現行プロセスの統計が表示される。
さらに、マシンビジョンシステムは、対象物の計測を行うこともできる。例えば、生産工程での点火プラグのずれの判定や部品をそろえるロボットの誘導に必要な位置情報の提供などである。図2は、マシンビジョンシステムを使って、オイルフィルターの合否を判定する方法(右)とブラケット中央にあるタブ幅の測定方法(左)を示している。
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