個別受注型装置業は2D CADで十分? 確かに過去には課題が多かったけれど、今では結構実用的になってきました。
本記事は、CADを快適な環境で使ってもらうソリューション専門街「CADJapan.com」から転載しています。
個別受注型装置業において、現在設計ツールとして3D CADを採用しているか否かは二分されています。ただ、どの企業も3D CADを試験的に導入したりCADを扱うベンダーより情報を入手され導入検討の経験はあるのではないでしょうか?
過去より個別受注型装置業の企業さまからは、3D CADによる設計導入に関して厳しいご指摘を受けてきました。ただし最近は、多くの導入検討の依頼をいただくようになったと感じております。
検討理由についてお聞きすると、以下のような回答をいただきます。
上記の3つでは「業務上の課題」と「ITの課題」が混在していますので、少し掘り下げてみましょう。
まず「ITの課題」としては、大容量モデルの扱いです。ユニット同士の干渉チェックやレイアウト設計などで、大容量のデータを扱う場合、使い勝手にどうしても限界がありました。しかもコンピュータは能力の限界に近づくとレスポンスが急激に悪化します。大容量モデルなどでは、PCの能力限界付近で動作することも多く、レスポンスが急激に悪化することも多くなりました。ただ、Windows XPからWindows 7へ移行するに伴い、PCを64bit化する企業が多くなってきました。ご存じの通り、64bit OSでは使用できるメモリ容量が大幅にアップし、大容量モデルの扱いについて飛躍的に使い勝手が向上しています。
次に、海外工場との設計情報の意思疎通の正確性や、効率化の追求です。グローバル化により海外の事業所で設計、製造を実施する企業も増えており、高度な意思疎通が必要となりますが図面より3Dモデルの方が正確に早く構造の意図や形状情報を伝えることができます。図面を利用する場合、三面図から実際の形状を想像する能力が必要となります。その能力を養成するには、理論と実践を繰り返すことが必要ですが、この作業には、多大な時間を要します。その学習時間は、グローバル展開時の大きな課題となります。
最後に製品情報の可視化です。最近では、納品後のサポート力も企業競争力の1つとして重視する企業が増えています。言い換えれば、営業、サービスマンを含め自社製品の理解を深めた状態で業務を遂行せねばならないということです。このためには設計部門以外の社員が設計成果物に対する理解をより深めることが重要となります。この解決手段として製品開発の3D化が検討されていると理解しております。
あらためて言うまでもないかもしれませんが、3D CADデータの特長は以下の通りです。
例えば3D CADを個別受注型装置業に適用すると、納品ごとの装置の構成はもちろん、共有されているユニットや部品の影響範囲も容易に把握できます。従来の部品表と図面による管理より手間がかからず検索が可能になります。
企業さまでうかがうところによると、展開機種設計時には60〜70%の部品を展開元機種から流用しているとのことですが、ユニットの使用先などが容易に逆展開できる形でCADが運用でき、設計変更の影響範囲も容易に確認できます。
3D CADおよびCADデータの管理ツール導入が必須となります。3D CADとして、例えば、「SOLIDWORKS」の導入をする場合は、CADデータ管理ツールとして「Enterprise PDM」、「Inventor」を導入する場合は「Vault」となります。お客さまによっては、他にERPとの連携など、導入済みシステムとの連携が必要となる場合がありますが、いずれにせよ、3D設計の導入の本質はCADおよびCADデータ管理システムの導入となります。
これらのツールの導入に際しては、設計者をはじめ、多くの方々に負担がかかります。ただし、この導入時にどの程度工数をかけられるかが、その後の3D設計の展開の成否を決めるといっても過言ではありません。
(CADJapan K.H)
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