名古屋大学は、若年性認知症の2割弱を占めるといわれる前頭側頭葉変性症(FTLD)が発症するメカニズムを解明した。RNAタンパク質のFUSやSFPQの機能喪失マウスモデルでは、FTLDに類似する高次機能障害が起こることを確認した。
名古屋大学は2017年2月1日、若年性認知症の2割弱を占めるといわれる前頭側頭葉変性症(FTLD)が発症するメカニズムを解明したと発表した。
研究グループは、RNAタンパク質のFUSが神経細胞核内で別のRNA結合タンパク質であるSFPQと結合し、複合体を形成することを発見。FUSとSFPQの双方が、アルツハイマー病などの認知症に強く関わるタウタンパク質のアイソフォームバランスを制御していることを突き止めた。
そこで、FUSやSFPQの機能喪失マウスモデルを作成。これを観察したところ、アイソフォームのバランスが崩れて4Rタウが増加し、情動の異常など、FTLDに類似する高次機能障害が起こることを確認した。
さらに4Rタウを特異的に抑制し、タウアイソフォームのバランス変化を正常に近づけるレスキュー実験を実施した。これによって機能喪失マウスモデルが回復することも示した。
FTLDは、運動ニューロン病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)と遺伝的・臨床的・病理的な共通性があり、同一の疾患スペクトラムを形成していると考えられている。その中でFUSは、ALSとFTLDの病態に関わり、RNAの代謝機能を持つことも知られていたが、FUSが病気を引き起こすメカニズムは不明だった。
同研究は、名古屋大学大学院医学系研究科神経変性・認知症制御研究部門の祖父江元特任教授と難治性神経疾患治療学の石垣診祐助教らのグループによるもの。国際科学誌「Cell Reports」において2017年1月31日に掲載された。
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