ZMPは、名古屋大学が開発した自動運転システム用ソフトウェア「Autoware」を搭載した自動運転車の実験車両を販売する。Autowareは、Linuxなどと同様にオープンソースソフトウェアになっている。
ZMPは2015年8月25日、名古屋大学が開発した自動運転システム用オープンソースソフトウェア「Autoware」を搭載する自動運転車の実験車両の販売を開始したと発表した。同社製品である「RoboCarシリーズ」にAutowareを組み込み、3次元レーザースキャナなど自動運転に必要なセンサー類などの機器を同梱したパッケージとして販売される。基本パッケージの税込み価格は1780万円から。
ZMPが東京都内で開催中のイベント「ZMP FORUM 2015」(2015年8月25〜27日)では、Autowareの開発に携わる名古屋大学大学院情報科学研究科 准教授の加藤真平氏が登壇。加藤氏の研究グループが取り組んでいる自動運転技術の研究開発状況や、Autowareの仕組みについて解説した。
加藤氏が中心となって開発されたAutowareは、自動運転技術の研究開発用にGitHub上で公開されているオープンソースソフトウェアだ。ベースとなっているのはLinuxとROS(Robot Operating System)。3次元レーザースキャナや車載カメラなどのセンサーと組み合わせることで、自車位置や周囲の物体を把握しながら自動運転を行うことができる。
Autowareの最大の特徴は「3次元地図」を基に自動運転を行う点にある。この3次元地図とは、一般的なカーナビゲーションなどで使われている2次元の地図とは違い、道路周辺に設置されている立体物などを含めてさまざまな情報が取り込まれている。そして、Autowareを動作させるPC上に取り込んでおいた3次元地図と、車両上部に設置した3次元レーザースキャナが取得する車両周辺の情報を照らし合わせることで、自車の位置を把握する仕組みになっている。その自車位置推定の精度は約20cmと、GPSよりもはるかに高い。
加藤氏は、「われわれの研究グループでは、自動運転技術を実用化するには、3次元地図の普及が重要な役割を果たすことになると考えている。Autowareによる自動運転には、3次元レーザースキャナによって得た車両周辺の情報と3次元地図を連動が鍵となる。しかし現時点で、3次元地図があるのはごく一部場所だけだ。もしAutowareを搭載した自動運転車が3次元地図が用意されていない区域に入った場合には、3次元レーザースキャナが取得する情報から新たに3次元地図を生成することができる。このようにして生成した3次元地図は、自身の自動運転技術開発のために活用してもいいし、Autowareの機能を使って名古屋大学のサーバにアップして共有してもいい。3次元地図を作製する専用車では入れないような細かな路地を市街地のすみずみまで3次元地図を用意できるようにするには、こういった仕組みが必要だ」と説明する。
また加藤氏は、Autowareをオープンソース化した理由も挙げた。「1つのチームで自動運転技術の研究開発を進めるには限界がある。オープンにすると他で開発した成果を吸収できるので、新たに自動運転技術開発に取り組みたい人に向けてのスタート支援にもなる。そういったオープンイノベーションの促進によって、自動運転技術の研究開発が進む中で登場するであろうデファクトスタンダードに積極的に関わって行きたい」(同氏)。
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