組み込みシステム市場については、市場規模(組み込みソフトウェア業)は専業だけで年間売上高は約4500億円、事業所数は736カ所、従業員3万3000人に上る。また、組み込みシステムは内製化されているものが多く、それらを含めると開発費は約2兆7000億円規模となり、組み込みシステムが搭載されている自動車、家電などの製品の出荷額は約106兆円となり、非常に裾野の広い産業となっている。
さらにIoT社会が進むにつれて、機器のネットワーク化、システム化により、製造プロセス、モビリティ、スマートハウス、医療・健康、インフラなどさまざまな分野においてさらに市場の拡大が予想される。またクローズドな世界での単体動作から、ネットワーク経由で相互に連携する世界に移行することで、組み込みシステム・ソフトウェアには最新のセキュリティの実装による信頼性向上やAIによる高度化等新たな展開が始まっている。
だが現状は「人材の不足、ビジネスモデルの構築が難しい、IoTに関わる投資が難しい、などの課題がある」(滝澤氏)という。そこで政府では以下の4つの取り組みを開始したという。
このうち司令塔機能としては2016年5月、内閣府、文部科学省や、業界団体なども参画し「組み込みシステム司令塔会議」を組織し、戦略や政策などの検討を始めた。同年8月の第2回目の会議では日本が目指すべき姿を描き、その実現に向けた計画について議論。産業動向把握調査や産業戦略骨子など検討した。技術力の強化については、組み込みソフトウェアに関する先端技術などを戦略的に強化し、提供可能なエコシステムを産官学が連携して構築することを目指す。既に組み込みソフトウェア技術を課題に34テーマを抽出済みだ。
人材の確保では、スキルの明確化を図るために、組み込みスキル標準(スキル基準、キャリア基準、教育研修基準、自動車業界向けガイド)の改定を行うことを検討している。組み込みソフト産業の高度化に向けては、斬新なアイデアを持つ若い起業家やベンチャー企業などに対して、先輩起業家や投資家が助言や資金的支援などを行う仕組みを産学連携によって構築。さらに、下請け取引の適正化、新サービス展開時の規制確認・緩和などにも取り組んでいる。
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