トロンフォーラムの提唱するIoTエンドデバイス向けの組み込みプラットフォーム「IoT-Engine」に、東芝やルネサスなど半導体メーカー7社が協力する。各社が自社の強みを打ち出しつつ、デバイスがクラウド間の連携機能により“総体的”に働くIoTの実現を目指す。
トロンフォーラムは2016年4月27日、IoTエンドデバイス向けの組み込みプラットフォーム「IoT-Engine」のプロジェクトに半導体メーカー7社が参加すると発表した。参加する半導体メーカーは東芝マイクロエレクトロニクス、ルネサス エレクトロニクス、Cypress、Imagination Technologies、Novoton Technology、NXP Semiconductors、STMicroelectronicsの7社。
IoT-EngineはRTOS「μT-kernel 2.0」を搭載した、IoTエンドデバイス向けの小型モジュール。IEEE 802.15.4の無線機能とCoAPならび6LoWPAのプロトコルを搭載し、エネルギーハーベストでの動作も可能な低消費電力設計が施されている。Arduino互換のI/O割り当てもある100ピンコネクタは、コネクタの標準化も意図している。機械的な寸法についてもコネクタ形状とその固定位置、固定穴寸法とその位置について規格化されている。
モジュールとしてのIoT-EngineはOSと無線接続を含めた一部インタフェースについて規格化されているものの、それ以外の自由度は高い。そのため、Imagination Technologiesはハードウェア仮想化によるマルチドメイン化、東芝 マイクロエレクトロニクスは高速ADコンバータによる通信機能強化タイプとCortex-M4FでDSPライブラリが利用可能なタイプ、ルネサス エレクトロニクスは高い低消費電力性を持つ自社マイコン「RX231」を搭載と、各社がそれぞれの強みを反映したモジュールを開発製造していく。
トロンフォーラムが提唱するIoTのアーキテクチャは「Aggregate(総体) Computing」と表現されており、モノの直接的な制御を除く要素をできる限りクラウド側に任せることでエンドデバイスの低価格化と普及を狙い、加えて、ポリシーをクラウドで一元管理することによるデータ管理の高度化も同時に狙う。モノの接続と制御を担当するのがIoT-Engineだ。
「これからの組み込みシステムはセキュリティはもちろんだが、データと制御のガバナンス管理が重要。つまりデータを“出さない”のではなく、“適切に利用する”ことの重要性が高くなる」
「Aggregate Computingにおいて(IoT-Engineを搭載した)組み込み製品はメーカーのクラウドに直結され、そのクラウドがAPIをオープン化し、それらが他のクラウドと連携して動作する。特定のクラウドしか考えなければ、少ない計算資源で強固なセキュリティと高度な制御が容易に実現できる」(トロンフォーラム会長 東京大学大学院情報学環 教授 YRP・ユビキタスネットワーク研究所長 坂村健氏)
構想具体化のため、IoT-Engineを接続するアクセスコントロール基盤として東京大学大学音情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センター協力の下で「Open IoT Platform」を用意し、パーソナルメディアやユーシーテクノロジが半導体各社の開発するIoT-Engineモジュールや開発キットの販売を手掛ける。2016年夏にはモジュールや開発キットを利用しての試作と検証が行える準備が整う予定となっている。
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