JC08モードの試験自動車重量は、車両重量(運行に必要な燃料や潤滑油、冷却水等を全量搭載し、当該車両の用途に必要な設備を設けた状態)にドライバーなどとして110kgを加えていた。
これに対してWLTPでは、非積載状態の重量非積載状態の重量(乗車人員や積載物品を載せない状態で、燃料をタンクの9割以上に搭載。自動車メーカーが定める工具やスペアタイヤ等の付属品を全て積載する)にドライバー等として100kgを加える。さらに、その状態での残りの積載可能な重量として、乗用車は15%、小型貨物車は28%を上積みする。日本でも、WLTPと同様の試験自動車重量の設定となる。
シャシーダイナモメーターに設定する負荷「等価慣性重量」は、JC08モードでは試験自動車重量に合わせて段階的に引き上げるよう定められているが、WLTPでは重量に応じて無段階で増やしていく。シャシーダイナモメーターではステップレスな等価慣性重量の設定が可能となったため、WLTPではこのような設定を行うこととなった。
スタート時のエンジンの状態も変更がある。JC08モードではコールドスタート試験とホットスタート試験を実施、それぞれの試験に重み係数をかけて算出した数値が燃費値となる。これに対し、WLTPではコールドスタート試験のみを実施する。排出ガスの処理技術の進化によってホットスタートでは排出ガスがほとんどなくなっているので、排出ガスの低減がより重要になるコールドスタート試験を重視するためだ。
また、WLTPでは各車両の走行に必要な出力やエンジンの特性を踏まえて変速位置が決定される。このため個別の車両の性能がより反映される試験方式になるとしている。
一定の項目が同一条件の車両については、既に測定済みの燃費値から計算する補間で燃費値を算出することが認められる。
WLTPは2014年3月の国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で成立した。WP29では、自動車に関する基準の国際調和と型式認証の相互承認を多国間で議論する。
現在、排出ガスや燃費の測定試験方法は国や地域で独自に設定されている。自動車メーカーは型式認証を取得するため、各国の試験に対応しなければならない。例えば、欧州はNEDC(New European Driving Cycle:新欧州ドライビングサイクル)を、米国では米環境保護局(EPA)が定める走行パターンを使用している。
このように国や地域で走行パターンが異なるが、シャシーダイナモ上で決められた走行パターンに沿って、専門のテストドライバーが加減速やシフトチェンジを行う点は共通だ。WLTPを採択することにより、一度の試験で複数の国や地域での型式認証に必要なデータを取得することができるようになる。また、基準が統一され、国をまたいで型式認証が取得可能になれば、設計仕様の統一や部品の共通化を進めやすくなり、開発や認証にかかるコストを低減できるとしている。
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