旭化成は、「CEATEC JAPAN 2016」において、伸び縮みが可能な電線「ROBODEN(ロボ電)」のウェアラブル機器をはじめとする情報機器向けの適用イメージを披露した。
旭化成の繊維事業本部は、「CEATEC JAPAN 2016」(2016年10月4〜7日、幕張メッセ)において、伸び縮みが可能な電線「ROBODEN(ロボ電)」のウェアラブル機器をはじめとする情報機器向けの適用イメージを披露した。
ロボ電は、力を加えない基準の状態から引っ張って伸ばしても断線することがない構造を持つ伸縮電線である。2007年ごろに同社が開発し、産業用ロボットなどの配線用途を中心に採用されている。ロボ電という名称も、主な用途として産業用ロボットを想定していたところから採用された。2014年から、大手FA商社のミスミが販売パートナーもなるなど事業展開も拡大している。
伸び率は40%(例:1mの電線が1.4mに伸びる)が基準で、顧客の要望により100%(例:1mの電線が2mに伸びる)まで対応できる。線径が4mmで4芯の品種が基準だが、線径が2mm台の細線から、40〜50芯をまとめたものなど顧客の要望に合わせて幅広い品種をそろえる。
今回の展示は、既に高い実績のある産業機器向けの「ROBODEN TR」ではなく、今後の需要増を見込んでいるウェアラブル機器などの情報機器向けの「ROBODEN TI」をアピールする内容になっていた。例えば、芯数が多くてケーブルの取り回しが難しいとされるHDMIケーブルについても、ロボ電を使えば伸縮自在のHDMIケーブルにすることができる。
また、伸縮するという電線をゴムバンドのように使えば、頭が外れにくいワイヤレスヘッドフォン/イヤフォンを実現できる。スマートウェアの配線に用いて、関節部の伸縮に対応することも可能だ。
さらに、電線を巻き付けた状態で持ち運びするノートPCや携帯電話機のACアダプターに適用すれば、巻き付けた電線が外れないスマートACアダプターになる。
「産業機器向けは数百万〜1000万回の伸縮繰り返し耐久試験をクリアしなければならないなど、高耐久性と高信頼性が求められる。このため単価が高く、一般消費者向けの製品には使えない。そこで、耐久性を繰り返し試験で10万回をクリアするレベルにした情報機器向けのROBODEN TIを開発し、価格を産業機器向けよりも大幅に抑えた」(旭化成の説明員)という。一般消費者向けを意識して、愛三電機を通じての市販も既に行っている。
情報機器向けロボ電の最大の特徴は、どうしても有線接続が必要になる電源供給を行う電線として十分な性能を持っていることだ。「ロボ電は、一般的な銅線を使いながらも独自の構造によって伸縮を実現している。競合の伸縮電線は、銅線と同レベルの低抵抗を実現できていないので、信号伝達には使えても電源供給には適していない。ロボ電であれば、伸縮しない電線と同様に、信号伝達にも、電源供給にも使っていただける」(同説明員)としている。
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