工場内を産業用ロボットが自律的に走り回る時代に、日立が走行装置を開発:産業用ロボット
日立製作所と日立プラントメカニクスは、産業用ロボットを自律的に走行させられる自律走行装置を開発した。
日立製作所と日立プラントメカニクスは2016年10月11日、専用レールや移動ガイドなしで産業用ロボットを自律的に走行させられる自律走行装置「HiMoveRO(ハイモベロ)」を開発し販売を開始した。
「HiMoveRO」の外観(下部)。上部はカワダロボティクス製双腕ロボット「NEXTAGE」
「HiMoveRO」は、固定して使用することが多い産業用ロボットを自律走行させるための無人搬送車(AGV)である。産業用ロボットを自律走行させることで作業範囲を広げ、1台で複数の作業を行えるため、生産性の向上を図ることができる。また、生産現場や物流現場の頻繁なレイアウト変更にも柔軟に対応できる特徴などもある。開発には、カワダロボティクス製双腕ロボット「NEXTAGE」を搭載し、動作性能の確認を行ったという。
「HiMoveRO」はレーザー距離センサーを搭載しており、周囲の情報を取得して電子地図を自動作成する。これにより走行ルートを設定し、専用のレールや走行ガイド、マーカーの設置などの必要がなく、自律的な走行が可能だという。設定した走行ルートと誤差が生じた場合には、電子地図とマッチングさせて自己位置を自動で認識し、補正しながら走行する。独自技術を活用し誤差±10mm以内という高い精度で目的地に停止させられるという。走行方式は二輪速度差方式で走行速度は最大で時速3.6km、通常は時速1.8km。鉛バッテリーを搭載しており手動交換による充電方式を採用している。オプションとしてクリーンルーム対応なども可能だ。
日立製作所と日立プラントメカニクスでは、「HiMoveRO」に搭載する産業用ロボットの選定や仕様決定を含めたシステムインテグレーションから設計、調達、製造、導入、アフターサービスまでを一括で行うとしている。対象業種としては、主に医薬品、電子部品および半導体工場の生産ラインや物流施設のピッキングラインを想定している。
- いまさら聞けない産業用ロボット入門〔前編〕
日本は「ロボット大国」とも呼ばれていますが、その根幹を支えているのが「産業用ロボット」です。それは世界の産業用ロボット市場で圧倒的に日本企業がシェアを握っているからです。では、この産業用ロボットについてあなたはどれくらい知っていますか? 今やあらゆるモノの製造に欠かせない産業用ロボットの本質と基礎を解説します。
- 人工知能で走る搬送用ロボ、目指すのは生産ラインの「超柔軟性」
オムロンは人とロボットが協調するモノづくり現場実現に向け米国子会社オムロンアデプトテクノロジーズが開発した無人搬送用ロボットを世界33カ国で発売する。
- “棚ごと運べる”無人搬送車、床面マーカー不要で自律走行を可能に
日立製作所は物流倉庫などで商品を棚ごと搬送する無人搬送車向けに、搬送による商品棚の移動を検知し、無人搬送車に登録された商品棚の配置図をリアルタイム更新しながら自車の位置を認識する技術を開発した。これにより床面にマーカーなどを設置せずに無人搬送車を自律走行させることが可能になるという。
- “人とロボットが一緒に働く” 3つのポイントで壁低く
規制緩和により人と共に働く協働ロボット(協調ロボット)が注目度を増している。生産ラインの柔軟性を大きく高められる可能性があるからだ。人間協調型の産業用ロボットベンチャーである、ユニバーサルロボットは日本向けの技術発表会を開催。普及を後押しする3つのポイントについて紹介した。
- インダストリー4.0は人間の仕事を奪うのか
ハノーバーメッセ2015のメインテーマとなった「インダストリー4.0」。本連載では、現地での取材を通じて、インダストリー4.0に関する各社の動きを3回にわたってお伝えしている。中編の今回は「ロボットと人間との協調」への取り組みの紹介と、人間の果たすべき役割の変化について考察する。
- “人との協調ロボット”を突破口に、ロボット活用の場拡大を狙うKUKA
インダストリー4.0など製造革新の動きが進む中、製造現場で人の存在は必要なくなるのか――。こうした動きの一方で今、注目を集めているのが「人と協調して働けるロボット」である。KUKAロボティクスジャパンでは、人との協調ロボットを基軸に日本市場での産業用ロボットの新たな活用を訴えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.