Cortex-R52は、ハードウェアベースでの仮想化に対応するタイプ1(ベアメタル)ハイパーバイザの搭載も特徴になっている。IntelやAMDのプロセッサコア、Cortex-Aシリーズなどもタイプ1ハイパーバイザを搭載しているが、Cortex-R52ではリアルタイム性も保証している。「レイテンシは周波数などにもよるため明確な数字は回答できない。ただし、少なくともms以下でなければリアルタイム性を保証するとはいえない」(ARM)としている。
自動車は機能向上が進むにつれて、それらの機能を制御するECU(電子制御ユニット)の搭載数も増加している。タイプ1ハイパーバイザを搭載するCortex-R52を使えば、1個のECUに従来の複数のECUの機能を統合することも可能だ。既存の車載ソフトウェアに大幅な変更を加えずに、ほぼそのまま再利用しながらECUの統合を果たせることは大きなメリットになる。
また先述したさまざまな機能安全規格に対応するため、Cortex-R5よりも安全性に関わる機能を強化した。新しい特権レベル、バスインターコネクションの保護、ソフトウェアBIST(built-in self test)のライブラリ、エラー制御の強化、ECC(エラー訂正符号)のコンフィグレーション対応、レベル2のMPU(メモリ保護ユニット)などである。さらに、Cortex-R52を用いて機能安全規格に準拠したソフトウェアを開発できるように、プロセッサのIPとともに多くのセーフティドキュメントも提供するとしている。
Cortex-R52は新製品である以上、性能面でもCortex-R5を大幅に上回っている。さまざまなベンチマークスコアで、Cortex-R5比で20〜30%の性能向上を果たしているという。また割り込み応答性は2倍、マルチコアプロセッサのプログラミングで必要なコンテキストスイッチも14倍に高速化した。最大4コア構成まで可能であり、これら4コアに対して、機能安全規格への対応でも重要な冗長化のためのロックステップ動作を適用することができる。
ARMは、Cortex-R52の対応OSについて正式には発表していないものの、「ARMのプロセッサをサポートするエコシステムから提供される」(ARM)とコメントしている。Cortex-R52の発表文でコンパイラの提供を表明しているGreen Hills Softwareや、QNX Software Systems、イーソルなど、これまでもARMのプロセッサをサポートしてきたリアルタイムOSベンダーが対応することになりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.