デンソーにおける新事業とは、自動車部品や自動車用品以外の事業のことを指す。現在の新事業の売上高は、全体の1.4%に当たる650億円弱にすぎない。さらに、この650億円弱のほとんどを、子会社のデンソーウェーブが扱う産業用ロボットや制御機器、自動認識機器といった産業機器、業務用の冷暖房機器やエコキュート、HEMSなどの生活関連機器が占める。
今回の会見で紹介された「マイクログリッド」「セキュリティ」「ヘルスケア」「農業支援」「コールドチェーン」「電動アシスト」「情報ソリューション」「バイオ」の新事業8分野は、現時点ではまだ大きな規模に育ってはいない。その一方で、2020年の新事業の売上高目標は1000億円であり、約350億円の成長をけん引する役割を期待されているのも、新事業8分野ということになる。
会見では新事業8分野のうち「セキュリティ」「情報ソリューション」「農業支援」「電動アシスト」「ヘルスケア」における最新の取り組みを紹介した。
まず「セキュリティ」では、自動車の運転支援システムのセンサーに用いているレーザーレーダーとカメラの技術を応用したセキュリティシステム「ZONE D」を商品化している。
ZONE Dは、あらかじめ設定した見守りエリアへの不審者の侵入を検知すると、即座に警告や威嚇を行い、セキュリティ担当者にもカメラ映像などで状況を知らせる。コンセプトは「未然防止」であり、「建物にたどり着く前に侵入者を立ち去らせ、犯行そのものが行いようにする」(デンソー 新事業推進室長の永井立美氏)。
他のセキュリティシステムとの組み合わせによるソリューションビジネスに注力しているのもポイントで、防犯設備士の資格取得者による現場診断から、システム設計、施工、保守・メンテナンスまでを一気通貫で提案できるようにしている。自動車販売店を中心に、既に200カ所以上に導入済みで、今後は鉄道踏切や高速道路などへの展開も計画中だ。さらに、日中は来店顧客をスムーズに出迎える「おもてなし支援システム」としての運用も想定しているという。
「情報ソリューション」では、カーナビゲーションシステムの開発などで培ったHMI(Human Machine Interface)技術を基に開発した、タブレット端末による電子回覧板システム「ライフビジョン」を展開している。永井氏は「高齢者の利用を想定し、とにかく使いやすいのが特徴」と説明する。香川県直島町での行政情報配信事業を皮切りに、既に3つの自治体に導入されており、16の自治体で実証実験を実施している。
「農業支援」では、同じ新事業の先輩に当たる制御機器と、自動車のセンサー、カーエアコンの気流解析などの技術を組み合わせて開発した「プロファーム」を販売している。トマトのハウス栽培を中心に108件の導入事例があるという。プロファームの事業展開では、愛知県を中心に展開するトップクラスの種苗販社・トヨタネと提携し、栽培プロセス全体のソリューション提供にも乗り出している。
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