ストラタシス・ジャパンは3Dプリンティング技術をテーマとした講演イベントを開催した。本稿では同イベントでストラタシスが明かした、3Dプリンティングの新技術「Demonstrator」、3Dプリントの出力処理を簡素化する「GrabCAD 3D Print」の情報について紹介する。お寿司(すし)も少しだけいかが?
ストラタシス・ジャパンは2016年9月6日、3Dプリンティング技術をテーマとした講演・展示イベント「3Dプリンティング・フォーラム」を開催した。基調講演ではStratasys AP アジア太平洋地域&日本担当ゼネラルマネージャー オメール・クリーガー氏が講演し、3Dプリンティングにおけるビジネス概況について述べるのと併せて、同社とパートナー企業による新技術「Demonstrator」2種についても触れた。また同イベントのセッションでは、2014年に買収したGrabCADのその後の状況について、GrabCAD.comプロダクトディレクター グラント・トーマス=ルポア氏が日本で初めて説明した。
本稿ではストラタシスが明かした、DemonstratorとGrabCADの情報について紹介する。
現在も同社が開発中の3Dプリンティングの新技術、Demonstratorは「Infinite(インファナイト)-Build 3D Demonstrator」(以下、Infinite-Build)と「Robotic Composite 3D Demonstrator」(以下、Robotic Composite)の2種がある。両技術はFDM(熱溶解積層)をベースにして開発してきた。
「最終製品で3Dプリンタを活用することは、従来の試作で得られる経済価値を上回る。現在、その方向へ動きつつあり、ユニークな事例もいくつか見られるものの、まだ“ほとんど始まっていない状態”といえる。ポテンシャルは大きく急成長分野ではあるものの、市場が成熟するのはまだ先の話である」(クリーガー氏)。3Dプリンタを最終製品や製造ツールでも活用することを検討した場合、現状の技術では「超えられない壁」が存在する。両技術はその壁に挑む取り組みの一部である。
航空機や自動車の製造ツールや最終製品を3Dプリンティングで造形するとなると、どんなに大型の装置を用意しようとも、既定の造形サイズに収まらないこともある。その場合はパーツ分割をして張り合わせて作るか、諦めるしかないだろう。張り合わせて作れば当然強度を損なうことになり、それを製造ツールや最終製品として使用するには非常に厳しい。また航空機や自動車では大型部品において、強度を損なうことなく軽量化するために複合材を多用するが、それを3Dプリンティングしようとする際、一方向に積層造形するが故に、炭素繊維を組み合わせた異方性のある複合材料を採用することが難しい。
航空機メーカーのボーイング、自動車メーカーのフォードと共同開発しているInfinite-Buildは、いわゆる「造形長さの制約がない」大型3Dプリンタである。従来の3Dプリンタはワークテーブルが水平配置で、エクストルーダー(材料の射出部)はそれに対して垂直に当てられる。Infinite-Buildでは、ワークテーブルは垂直配置になりエクストルーダーはそれに対しては垂直になるが、全体としては真横を向く。つまり、長いものを作りたい場合は、ワークテーブルとエクストルーダーの距離を必要な分だけ伸ばしていけばよい。理論的には、場所と材料が許される限り、いくらでも造形物を長くすることが可能ということになる。
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