「Autonomous Vehicle and ADAS Japan 2016」には自動車メーカーやティア1サプライヤ、地図メーカーが登壇し、参加者の質問にも答えながら講演やパネルディスカッションを行った。2日間にわたるカンファレンスのレポートをお送りする。
毎年10月に東京都内で開催されている、自動車のITや通信に関するカンファレンスの「TU Automotive(旧テレマティクスジャパン)」。そこからのスピンアウトとして、自動運転と先進運転支援システム(ADAS)に特化した「Autonomous Vehicle and ADAS Japan 2016」が、2016年7月11〜12日に開催された。
会場のウェスティン東京には「想定よりかなり多い」(主催者)という、200人を超える自動車産業やIT産業の関係者が集まり、市場の最新動向と今後の行方について情報交換した。
参加者が多い理由は、2015年後半から自動運転の実用化について世界各地で大きな動きが見えてきたからだ。
例えば、DaimlerとBMW、Volkswagenグループの3社は地図メーカーHEREを買収。Ford Motor(フォード)は既存の自動車事業からデータビジネス産業への転換を宣言した。そして中国地場のIT企業、BAT(バイドゥ/アリババ/テンセント)のそれぞれが自動運転車の開発を進めていることなどが挙げられる。
また、2016年4月には、Google、フォード、Audiにライドシェア大手のUberとLyftが加わり、ロビー活動団体を設立した。協力して米国連邦政府に対して自動運転の規制緩和を求め始めたことも、自動車/IT産業に与えるインパクトが大きい。
さらに、今回のカンファレンスの2週間前にはTesla Motors(テスラ)の事故が大きく報道された。自動運転機能「オートパイロット」作動中のテスラ「モデルS」が起こした2016年5月のフロリダ州の死亡事故について、米国運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が詳細な調査に入ることが分かったのだ。
こうした海外での動きもさることながら、日本での最も大きな関心事は政府の自動運転に対する“大幅な見直し”になるだろう。
2016年5月20日、自動運転の実用化に向けた国の工程表である「官民ITS構想・ロードマップ2016」(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)の「市場化等期待時期」が大きく前倒しされた。
具体的には目標としてきた実用化時期を3〜5年早めて、NHTSA及び国土交通省で定義するレベル3の自動運転は2020年代前半ではなく2020年に、また、これまで実用化を2020年代後半以降としていたレベル4の自動運転を2025年に前倒しする。
この他、大きな変化として、レベル4のなかで「遠隔型/専用空間」との分類を追加し、実現が見込まれる技術として無人自動走行移動サービスを例に挙げ、「限定地域で2020年までに」と記載した。
このような“大幅な前倒し”と“大きな変化”は、日本政府が海外動向を踏まえて判断したものだ。特に、米政府と、ドイツ自動車メーカーの影響が大きい。そして、今回のロードマップ改定は、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けた産学官の連携、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に直接的な影響を与える。
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