PICLS Liteの無償化の理由については「Liteだけでもかなりのことができると思っている。ただ基板設計で熱のシミュレーションは使われていないに等しい。そのため大きなことをしなければ普及しないのではないかと思っている」(同社 技術部 技術二課 衛藤潤氏)という。
PICLS V2の年間当たり使用料は19万8000円で、技術サポート、バージョンアップが含まれる。契約は1年ごとの契約更新のみ。フローティング式ライセンスで1台のマシンにインストール、またはネットワーク上の1台にインストールしてネットワーク内で使用するネットワークライセンスを提供する。
PICLS Liteに加えて、ライブラリ機能、ヒートシンクや筐体接続放熱などが加わり、より具体的な熱対策の検討に対応する。またECAD IDF3.0のインポートが可能。エクスポートは2016年7月26日から提供するアップデート版から可能になる。ガーバデータのインポートも同日から可能だ。
PICLSは簡易性やリアルタイム性を最優先としているため、本格的な解析ツールのように流れを完全に解いているわけではないという。実験値との比較として、配置や配線パターンを変化させた際の温度変化の比較を紹介した(図3)。
PICLSは現場の課題を基にして生まれたソフトウェアだという。従来は機構設計の段階で、主に放熱部品を使用した熱対策が行われてきた。だが高密度化・小型化に伴い、配線パターンやビアなどによる放熱が重要になり、基板側で熱対策を行う必要性が出てきた。
そのためソフトウェアクレイドルでも、同社が提供する熱流体解析ソフトウェアの「STREAM」や「熱設計PAC」に、配線データのインポート機能や配線パターンに関する算出機能などを追加してきたという。だがそれでも「基板設計者にとっては難易度が高いという声を聞いていた」(同社 営業部 営業二課 奥田耕治氏)。例えば熱流体解析自体がよく分からない、普段使用する基板CADは2Dのため3Dモデルの操作が難しい、また解析も期待するほど早くなくソフトウェアも高価といった意見があった。そのため専用ツールを開発した方がよいということになったという。ニーズの調査の中で、モデル作成が簡単、リアルタイムで温度分布の変化として確認できるということは外せないという結論に至り、PICLSが生まれたということだ。同社は2021年までの5年で250ライセンスの販売を目指すとしている。
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