芝浦工業大学とカルソニックカンセイは、ドライバーの心拍数を基に快適かつ最小限に空調を制御する次世代カーエアコンの研究を開始した。暑くなる/寒くなるといった温度変化に対し、心拍数や自律神経の働きからドライバーが感じている快/不快を識別する。ドライバーに合わせて室温を制御して空調の効率を改善し、燃費性能の向上や電気自動車の走行距離延長につなげる。
芝浦工業大学(機械制御システム学科 教授 伊東敏夫氏)とカルソニックカンセイは2016年7月6日、ドライバーの心拍数を基に快適かつ最小限に空調を制御する次世代カーエアコンの研究を開始したと発表した。暑くなる/寒くなるといった温度変化がストレスとなるため、心拍数や自律神経の働きからドライバーが感じている快/不快を識別できることを実験で明らかにした。ドライバーの快/不快に合わせて室温を制御して空調の効率を改善することにより、燃費性能の向上や電気自動車の走行距離延長につなげる。
心拍数を基にして温度変化による快/不快を識別する方法は論文「温度変化による心拍と温熱感との関連に関する研究」にまとめ、自動車技術会の2016年春季大会で発表した。
人間がストレスを感じているかどうかの指標となる生体情報は、脳波が代表的だ。しかし、脳波よりも運転中に測定しやすく、計測機器をシートやステアリングに組み込むことが可能なため、心拍数を基準とした。
実験では、室温26.5℃を一定時間維持した後、21.0℃に低下、もしくは31.7℃に上昇させて室温を維持する環境で、被験者の心拍数を測定した。心拍間隔(RRI)や、心拍数を基に算出した交感神経/副交感神経の働きから、温度変化によって感じる快/不快を識別できるか検討した。
この結果、快適な26.5℃と温度変化させた後の21.0℃/31.7℃の条件では、心拍数や自律神経の働きを示す数値が異なることが分かった。室温を低下/上昇させた後は、ストレス状態であることを示す自律神経の働きの数値が大きく増加した。また、室温を上昇させた後はRRIが減少し、室温が低下した後はRRIが増加するといった、温度変化による結果の違いも見られた。測定値に明確な差があり、快/不快を心拍から判断できるとしている。
今後は、リアルタイムな快/不快の識別を行うことを目標とする。また、体格の違いや、実際の運転、突発的な緊急事態など、心拍数を変動させる実験条件を追加して検証を継続する。
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