TPMでは、こういった設計活動のことを「MP設計」と呼びます。MP設計とは、単に故障や不良に限定せず、生産システム効率化を阻害するあらゆるロスを未然防止する、製品設計や設備・工程設計を意味します。さらに製品設計では、製品の機能を満足したうえで自動化しやすく品質保証しやすい「作りやすい製品設計」という活動を、開発・設計部門が生産技術や生産現場の立場に立って行います。
新設・改造された設備は、故障トラブルや調整により、設備総合効率が低いまま量産段階に移行するケースが一般に見受けられます。これは、設備の初期管理段階における信頼性/保全性/経済性/安全性/作業性/品質保全性/融通性などに対する設計不良の結果です。MP設計とは、新規設備のロスを防止するため、故障しない、保全しやすい、安全で使いやすい、不良を発生させないような設備を設計することです。
しかし、実際の設備設計プロセスでは、MP設計が軽視されている場合が多いもの事実です。設計の大半は、設備の基本的な機能(品質条件)をどう満足させるかに注力し、MP設計まで考えが回らないのが現実です。設計を外部の設備メーカーへ発注している場合は、細かい対応はさらに難しくなります。
MP設計を実施するには、実際に現場で発生したトラブルや改善点を設計へフィーバックすると同時に、新規設備に内在している問題点を見逃さないようにする必要があります。現場から設計へフィードバックするためには、現場が設計者の目や頭脳の代わりとなるつもりで、発生したトラブルに対し、生産現場が具体的な改善案まで作成することが重要になります。例えば、段取りがしやすいように機構的なイメージ図を作成し、それを持って設計と話をするなどです。そのためには、発生した問題について原因を追求し、改善案を考え、課題や解決案を整理できるようにする必要があります。
また、新規設備に内在している問題点を見逃さないために、MP設計のための設備チェックシートや設計基準を整備することも重要になります。MP設計を実施するためには、設備の具備すべき条件を明確にしてゆくことです。これらは、一朝一夕で整備できるものではありません。自社技術をエンジニアリングスタンダードとして蓄積し、その蓄積した技術をどう設備設計に反映させるという仕組みが重要なポイントになります。
設備設計では、「使いやすく、保全しやすい設備開発」と「LCC(Life Cycle Cost)ミニマム化やLCP(Life Cycle Profit)マキシマム化による経済性の追求」も取り組みます。TPMは生産システム効率化の極限追求に挑戦しますが、生産部門だけの活動では限界があると考え、開発・設計部門も巻き込んだ活動形態を取っています。
加えて、これらの新製品や新工法、新設備の開発期間の短縮も求められます。このリードタイム短縮に効果があるのが「ロバストデザイン」です。設計段階で問題点を予測し、予測した問題が発生しないように事前に対応しておくことが重要であり、FTA(Fault Tree Analysis)やFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)と併せて開発品のノイズに対するロバスト性(外乱を受けたときの乱れにくさ)を限界にまで引き上げておき、下流で行われる耐久試験などでの不具合を未然に防ぎ、試作、実験、設計変更の繰り返しを未然に防ごうとする活動になります。さらにCAD、CAE、DMU(Digital Mock Up)や3D化によるシミュレーションの活用で効果的なフロントローディングを行うことになります。
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