三菱自動車が言う「燃費不正」は、大まかに2点に分けられる。1つは、正規な惰行法ではなく“高速惰行法”を使い、そこで得られたデータを社内の知見によって「惰行法」に換算していたという点。
もう1つは、計測をまったく行わず、机上計算で架空のデータを作ったという点だ。
これら2点で、2点目については三菱自動車も「もってのほか」と認めている。
そして1点目について、三菱自動車は「試験の工数を減らすなどの可能性があったと考えられるが、最終的なデータとしての差異はほとんどない。ただし、国の規定に反していたことは遺憾だ」と説明する。
だが、ここで大きな問題がある。
「“高速惰行法”などという言葉は存在しない。今回の報道で初めて聞いた。三菱自動車の社内用語であり、その詳細は不明だ」(交通研 自動車認証審査部 主席自動車認証審査官)というのだ。
この点について、筆者は5月11日の記者会見で指摘した。それに対して「これは米国でいま(正規に)使われているやり方」(相川氏)との返答があった。だが、交通研は、米国自動車技術会(SAE)が2008年3月規定した「Downcoast Method」(J2263)と、三菱自動車がいう“高速惰行法”は、「同じではないと思われる」と言う。
三菱自動車は1978年から“高速惰行法”を採用していると言っており、当時の米国の手法を三菱自動車がアレンジしたものなのだろうか。
5月11日の会見で、筆者は三菱自動車に“高速惰行法”のマニュアルの早期の開示を求めた。それに対して、曖昧なニュアンスではあるが「了解した」という態度を示している。
5月18日に三菱自動車から国土交通省へ再度報告が行われる。記者会見は5月13日の立ち入り調査の件を含めて「荒れる」ことが予想される。そのなかで是非“高速惰行法”の詳細を公表してもらったうえで、技術的な議論を進めたい。
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