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» 2016年05月18日 09時00分 公開

三菱自動車はどのように走行抵抗値を測ったか、専門家も知らない独自手法?エコカー技術(2/4 ページ)

[桃田健史,MONOist]

二度目の会見

三菱自動車が不正に測定した数値を国として計測し直して原因究明にあたる 三菱自動車が不正に測定した数値を国として計測し直して原因究明にあたる (クリックして拡大)

 4月26日には、国土交通大臣の石井啓一氏が同省の自動局および自動車技術総合機構(NALTEC)によるタスクフォースを28日に設置することを発表。国として三菱自動車の燃費不正問題に関する原因究明に当たる姿勢を示した。

 また、同じ26日に三菱自動車は国土交通省に燃費不正問題に関する二度目の報告を行った。その直後の記者会見で三菱自動車は「前回の会見では、弊社の性能実験部の部長が(不正を)指示したと言ったが、そうした事実はないことが分かった」と発言。これに対して、メディアは「組織的な隠蔽工作ではないのかと」と激しく追及した。

 同日の記者会見では、軽自動車4車種のうち走行抵抗値を実測したのは2014年モデルの1グレードのみで、2014年モデルの大半のグレードや2015年以降のモデルでは“机上計算”のみで燃費目標に見合う走行抵抗値を算出していたことも明らかにした。

 次いで、5月2日。自動車技術総合機構の交通安全環境研究所(交通研)の自動車試験場(埼玉県熊谷市)に走行抵抗値の計測で不正行為が行われた軽自動車4車種が持ち込まれた。この4車種の本来の走行抵抗値の計測と、JC08モードでの排出ガスと燃費の測定が始まった。同日、交通研はメディア向けに「ekカスタム(ekワゴンの仕様の一種)」の走行デモンストレーションを公開し、惰行法の測定について説明した。

三度目の会見、翌日には日産による出資が公に

三度目の会見にようやく出席した三菱自動車 会長兼CEOの益子修氏 三度目の会見にようやく出席した三菱自動車 会長兼CEOの益子修氏(写真中央) (クリックして拡大)

 大型連休が明けて5月11日になると、三菱自動車が国土交通省に対して3回目の報告を行い、その内容を説明する記者会見を実施した。その中で、走行抵抗値の測定での不正行為は三菱自動車の完全子会社である三菱自動車エンジニアリング(MAE)が行ったと発表。

 また、軽自動車だけでなく乗用車の「RVR」などについても走行抵抗値を実際に計測せず机上計算したことが疑われるため、社内で調査中と説明した。

 こうして、言うことがコロコロと変わる三菱自動車の対応に、メディアは同社の企業体質そのものに強い不信感を抱いた。また、11日の報告を受けた国土交通省も、三菱自動車がそれまで提出した報告は不十分として、5月18日を期限に燃費不正問題に関する4回目の報告を求めた。

 そしてこの翌日の12日、日産自動車が三菱自動車に出資するという電撃的な発表となったのだ。

 さらに、翌13日午前9時、国土交通省は道路運送車両法第100条に基づき、三菱自動車本社(東京都港区)に燃費不正問題に関して立ち入り調査を実施した。これについては、12日の三菱自動車の会見後、国土交通省が「きょうの報告は、われわれが求めていた内容に対して不十分。時期は開示できないが、立ち入り調査の可能性もある」と説明しており、予測はついていた。

「犯人探し」と「補償問題」、さらにもう1つの論点

三菱自動車の燃費不正問題には技術的に不可解な点がある 三菱自動車の燃費不正問題には技術的に不可解な点がある (クリックして拡大)

 日産自動車との資本提携にメディアと国民の目が奪われているが、本稿を執筆している5月14日時点で、三菱自動車の燃費不正問題の論点をまとめてみたい。

 問題は2つある。1つは不正行為を行わせた指示系統の実態究明だ。軽自動車4車種については、2013年1月下旬から2月初めに、三菱自動車エンジニアリング(MAE)がタイで走行抵抗値を計測。データを改ざんして国土交通省に申請した。

 それを、三菱自動車の誰が指示したのか。その結果を三菱自動車社内でどのレベルの人間までが認識していたのか。また、RVRなど現在日本国内で販売している9車種についても、走行抵抗値を机上計算するなどの不正の疑いがある。それらはどのような指示系統で起こったのか。

 もう1つは補償の問題だ。型式の再申請の準備に伴い軽自動車4車種の生産と販売を中止しており、生産拠点の従業員、部品メーカー、ディーラーに直接的な影響が及んでいる。彼らにどのような補償をするのか。

 さらに、国に対してはエコカー政策に伴う税金の返納、そしてユーザーに対しては「正規の燃費値との差で乗じるガソリン代。売却する場合の下取り価格の差額。さらに(おわびとしての)プラスαを検討中」(三菱自動車 社長の相川哲郎氏が5月11日の会見にて発言)を、具体的にいつ行うのか。

 こうした「犯人探し」と「補償問題」について明らかでない点が多数あり、議論が展開される一方で、筆者がとても気になる技術的な項目がある。それは、三菱自動車が使う“高速惰行法”という「言葉」だ。

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