EPSは、自動車の走る/曲がる/止まるという3つの基本機能のうち、曲がるを担う車載システムだ。自動車向け機能安全規格であるISO 26262への対応も早い段階から求められてきた。
EPSの大手サプライヤである日本精工も、既にISO 26262に準拠した開発体制を構築している。ISO 26262で必須とされる車載ソフトウェア向け開発プロセスのAutomotive SPICEは2008年から、ISO 26262そのものは2012年から取り組みを開始。2014年には、ISO 26262に準拠したEPSをリリースしている。
一般的に、ティア1サプライヤがISO 26262への対応をうたう場合、第三者認証機関の認証を取得することが多い。しかし日本精工は自己認証を選択している。「第三者認証機関を使っていないのは、納入先の自動車メーカーから自己認証を求められたからだ。実際に、その自動車メーカーのアセスメントもクリアしている。そもそもISO 26262は車載システムを開発したサプライヤ自身がその内容を説明できる必要があるわけで、当社がそれをきちんと実践できたことは結果から示されている」(山田氏)という。
現在はISO 26262の第2版発行に向け、自動車技術会のワーキンググループに参加し、自動車メーカーやサプライヤと議論を重ねている。また海外テクニカルセンターと連携し、特にドイツの動きをキャッチアップするようにしている。
EPSの大手サプライヤである以上、開発が加速している自動運転技術への対応は日本精工にとっても急務だ。
自動運転技術に対する同社の対応の一例としては「東京モーターショー」で披露した「アドバンストアシストステアリングシステム」がある。「東京モーターショー2013」の初代システムでは、コラムタイプEPS+ホイールハブモーターによるトルクベクタリングなどの高度な操作支援を見せた。そして直近の「東京モーターショー2015」の2代目システムは、Dセグメント以上の大型車両にも対応可能なラックタイプEPSとの組み合わせに変更するとともに、自動運転システムによる衝突回避時の急激なタイヤの動きを吸収する舵角可変機構も組み込んだ。
また自動運転技術がレベル1からレベル2、レベル2からレベル3へと進んで行くのに合わせた製品の開発も検討している、例えばレベル3への対応では、モーターやインバータを2個備える1次故障対応の冗長システムを開発する計画だ。このシステムであれば、2個あるモーターもしくはインバータの一方が故障したとしても、故障前と比べてラック推力が半分になるものの運転操作を続けることができる。山田氏は「レベル3の自動運転車では『故障発生時に安全に止まる』ではなく『安全な場所まで移動できるように最低限の動作を続ける』ことが必要になる。この冗長システムはそのためのものだ。現行のEPSとパッケージングを変えず、数年内に上市したい」と述べている。
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