これらの他、会場内で出展数が多かったのが、前述のNEVに対応するEVだ。それも、第一汽車、東風汽車などの地場大手よりも、地場の中堅や新興メーカーの出展が目立った。
少し昔を思い起こせば、2010年ごろにも政府の施策「十城千両」に対応するため、北京モーターショーや上海モーターショーに中国地場製の各種EVが登場した。だが、その多くがガソリン車からのコンバージョンといった“粗末な造り”だった。
それに対して今回の北京モーターショーでは、フード内部の電装品のレイアウトを見ただけでも、欧米や日本製のEVと同様と出来栄えに仕上がっている。中国地場メーカーは伝統的に、ドイツ企業をあがめる傾向が強いため、Robert Bosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などからモーター、インバータ、リチウムイオン二次電池を調達しているようだ。インテリアもシフターやダッシュボードで、EV専用化した先進的なデザインだ。
また、燃料電池車については、乗用車向けでは北汽集団が「燃料電池搭載のレンジエクステンダー」の技術展示を行った。
そして、世界各地で本格的な公道実証試験が進む自動運転車でも、中国製が続々と登場した。長安汽車の場合、今回の北京モーターショーに合わせて、北京を終点とした高速道路2000km走破を達成。ベンチャー「LeSEE」は、2016年1月の「CES 2016」で世界発表された「Faraday Future(ファラデーフューチャー)」からEV技術の提供を受ける自動運転車を公開した。
ただし、中国で開発が進められてきた自動運転技術はもともと、中国軍による軍需を想定しており、高精度マップの作成についても“軍需の壁”が立ちはだかっている。検索サイトと地図情報サービス大手の百度(バイドゥ)はBMWと人工知能の開発で連携し、自動運転での応用研究を進めているが、そうした「自動運転の本質」について、今回のような一般消費者向けモーターショーでは研究の進捗状況が公開されることはない。
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。近刊は「IoTで激変するクルマの未来」。
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