走りに対する要求に応えて基本性能を改善するため、骨格の軽量/高剛性化を進め、削減した車両重量をアンダーボディーの補強に充てた。
スーパーハイトワゴンタイプの軽自動車「タント」から始めた部品の樹脂化を、パッソ/ブーンにも広げている。フロント/リアバンパーは従来も樹脂製だが、フロントフェンダーやバックドアに樹脂外板を採用した。また、軽スポーツカー「コペン」と同様に樹脂燃料タンクも搭載する。小型車用に容量は拡大しているが、剛性と衝撃吸収性を両立する構造はコペンと共通とした。
この他、ハイトワゴンタイプの軽自動車「ムーヴ」の「Dモノコック」と同様に軽量/高剛性なボディを目指した。具体的には、アウターパネルとインナーパネルの間の補強材に替えてサイドアウターパネルに全面的に厚板ハイテン材を採用し、構造断点を減らすことで骨格全体で衝撃を受け止める構造としている。
これらの工夫により、車両全体で前モデル比50kgの軽量化を達成した。
浮いた重量はアンダーボディの補強で相殺されるが、車両重量は前モデルと同じ910kgとなる。アンダーボディの高剛性化により操舵性やタイヤの接地感の向上を図った。アンダーボディの改良に合わせてサスペンションも剛性向上を進めた。
2WDはフロント、リアともにスタビライザーを採用し、ロールやふらつきを抑制する。フロントサスペンションのショックアブソーバーに大径シリンダーや大径ロッドを採用することによって、操縦安定性の改善や乗り心地の向上を実現している。リアサスペンションは、トーションビームのねじり剛性を高め、操縦安定性を改善している。
走行性能だけでなく静粛性にもこだわった。振動や音の発生と伝達を抑制するとともに、吸音材の最適に配置した。ステアリングは支持剛性を向上し、路面から伝わる振動を低減している。これにより「街乗りでのフラットで上質な乗り心地」(正木氏)を実現させたという。
運転支援システムは、パッソ/ブーンともに、ダイハツ工業が開発した「スマートアシストII」を採用している。
室内空間の課題は、ホイールベースの延長とリアシートの配置を後方にずらすことによってクリアした。ホイールベースは前モデル比で50mm、前席と後席の乗員間の距離は75mm拡大した。
ただし、従来モデルと比べて「荷室のアレンジの自由度が多少犠牲になった。荷室の広さよりも、大人5人が普通に乗れるベーシックなクルマとすることを優先した。このあたりも含めて『やっぱり軽自動車と登録車は違うね』と感じていただきたい」(正木氏)。全長や全幅は従来の寸法を維持し、取り回しの良さは残している。
シートは、ムーヴのものを小型車向けに改良した。形状をムーヴから大きく変更しており、骨盤を保持して快適に座ることができるようフィット感を改善した他、旋回時などでも安定したホールド性を持つとしている。
正木氏は、今後ダイハツ工業が展開する小型車づくり「DNGA」について、「詳細はこれから決めて行くことになるが、軽自動車の成功例の取り込みは今後も積極的に行うことになる」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.