台湾のVIA Technologiesが、タクシー大手である日本交通の子会社JapanTaxiと車載IoT(モノのインターネット)端末を共同開発した。JapanTaxiは、この車載IoT端末や連携するタクシー向けの機器/クラウドサービスを、親会社の日本交通だけでなく、他のタクシー会社にも販売する方針だ。
台湾のVIA Technologies(VIA)は2016年3月14日、東京都内で会見を開き、タクシー大手である日本交通の子会社JapanTaxiと共同開発した車載IoT(モノのインターネット)端末について説明した。JapanTaxiは、この車載IoT端末や連携するタクシー向けの機器/クラウドサービスを、親会社の日本交通だけでなく、他のタクシー会社にも販売する方針だ。
JapanTaxiの親会社である日本交通は、東京都内に約4000台、グループ全体で5000台超のタクシーを保有している。台数規模では九州を拠点とする第一交通産業が国内トップだが、売上高では日本交通が1位。JapanTaxiは、その日本交通のIT部門として発足した子会社である。
JapanTaxiでプロダクトマネージャーを務める山本智也氏は「現在、モビリティサービスは激動の時代を迎えている。Uber(ウーバー)やHailo(ヘイロー)といったライドシェアが登場し、自動運転車の開発が加速するなど、日本のタクシー業界はいつ食われてもおかしくない状況だ。ただし現時点において、東京都内に4000台を展開している日本交通は、1台も車両を所有していない先述のライドシェアサービスと比べて良い立ち位置にいると考えることもできる。JapanTaxiは、これらのタクシーを生かした新たなモビリティサービスに求められるであろう、さまざまなハードウェアやソフトウェアの開発に取り組んでいる」と語る。
同社の事業の中でも広く知られているのが、無料のスマートフォン向けタクシー配車アプリ「全国タクシー」だろう。47都道府県の約2万7000台が対応しており、既に300万ダウンロードを突破している。
そしてもう1つの柱に位置付けているのが、タクシーに搭載されているさまざまな機器の自社開発である。山本氏は「タクシーには、カーナビゲーションシステムや料金メーター、配車システム、決済システム、領収書のプリンタ、ドライブレコーダーなど多数の機器が搭載されている。従来は、これらの機器を別々の会社から購入していた。日本交通の場合、車両1台につき、それらの機器だけで総額80万円に上ることもあった」と説明する。また、コストだけでなく、乗務員にとってのユーザビリティが低いことも課題になっている。「最初に行う1〜1.5カ月の乗務員研修のうち、これらの機器利用だけのために3日間を費やしている」(山本氏)という。
JapanTaxiは、これらの課題を解決するためにAIOS(All-In-Ine-System)というコンセプトを打ち出した。タクシーに搭載されているさまざまな機器を、1台のタブレット端末に統合してしまおうという構想だ。このタブレット端末はクラウドサーバと直結し、タクシーの運行データなどをビッグデータとして収集する。
さらに、AIOSとクラウド、スマートフォンアプリの全国タクシーが連動する「タクシー×IoT」というより大きな構想も検討している。
そして実際に、市販のAndroidタブレット端末にカーナビゲーションと配車システムを統合して試験運用を始めたが、さまざまな課題が見えてきた。中でも最大の課題だったのが熱問題だ。「市販のAndroidタブレット端末の場合、直射日光で温度が上がると自動的にサーマルシャットダウンしてしまう。これを何とかしたかった」(山本氏)。
そこで、動作温度範囲の広いタブレット端末の開発を依頼したのがVIAである。ただしVIAは、「タブレット端末単体で表示と情報処理を全て行おうとすると、熱問題を解決するためかなり高コストになる」と分析。JapanTaxiに対して「表示機と情報処理ユニットを分離すれば、最適なシステムを開発できる」という逆提案を行った。この提案を受け、表示と操作を行うタッチパネル、情報処理や通信を受け持つユニットを分離した車載IoT端末を開発することとなった。山本氏は「急な方向転換ではあったが約6カ月で開発を完了してもらえた」と述べる。
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