自主保全展開の7つのステップの具体的な内容は以下の通りです。
設備を清掃することにより、汚れによるストレスを排除するとともに、不具合(漏れ・ユルミ・損傷など)を発見し、発見したものは復元を行います。この不具合の発見をエフ付け活動といい、復元をエフ取り活動という。これらを通じ、設備の機構を理解するとともに不具合を不具合として見る目を養います。「清掃は点検なり、点検は不具合の発見なり、不具合は復元改善するものなり、復元は成果なり、成果は喜びなり、喜びは次への糧なり」を体験します。
ゴミ汚れの発生源を断ち、飛散防止や清掃給油の困難箇所を改善し、与えられた目標時間で、清掃給油ができるようします。また、改善を通し「改善の目を育てる」すなわち観察、解析、対策を行うことにより、改善の4原則であるECRS(排除・統合・順序変更・単純化)を学ぶことになります。何度も改善を重ねることにより設備に対し、愛着心や興味が生まれてくるのです。
第1・2ステップを継続して維持するために、清掃仮基準の作成と、給油と潤滑状態を見直し、不具合箇所や給油・点検困難を摘出・改善し給油仮基準を作成することにより、設備の信頼性と保全性の向上を図り、守りやすい基準書をオペレーター自ら作成します。この段階で強制劣化のない状態を作り上げ、維持を行うのです。
設備の極限効率化を図るために、設備および部品に至るまでの構造・機能・原理の理解と「あるべき姿」を学び、設備を漏れなく点検し、潜在化している欠陥を顕在化し、本来の姿に復元・改善をします。締結、潤滑、油圧、空圧、駆動、電気、安全、加工条件など全てが対象となり、この段階であるべき姿の知識と点検・復元技能を身に付け、設備に強いオペレーターが育成されることになります。
第4ステップまでに実現した、設備のあるべき姿をこれからも維持改善し、さらに設備の信頼性・保全性・設備品質をさらに高めなければなりません。そのために、今まで作成した清掃基準、給油基準、総点検基準、設備品質点検基準を見直し、点検の効率化と点検ミスのない状態に作り上げ、自主保全基準(第3ステップが仮基準に対し、このステップでは本基準)をまとめて、実践します。保全部門で行っている計画保全の年間保全カレンダーとの突合せや、個別改善からの維持項目の見直しも行い、ロスゼロの設備を作り上げることになるのです。
前ステップまでは設備を中心に基本条件の整備や日常点検に重点を置いた活動を行ってきました。ここでは、この維持管理を確実にするとともに、オペレーターの役割を設備周辺の関連作業にまで広め、さらに徹底したロスの低減を図り、自主管理を仕上げる基盤を構築するものです。設備管理の他に安全や品質、治工具、予備品、資材、計測器、作業、工程、工事、環境、物流、生産管理など、モノづくりに必要な日常管理項目を対象に守られ度の確認と向上、さらに守りやすくする改善を通し、各種の標準化を行います。
これまでの活動を全て集約化し、設備を変え、人を変え、職場を変えて成果を出した実績に自信を持ち、さらに「改善は無限なり」の考え方で限りなくチャレンジを続け、参加、連携、創造と感動を味わう場となります。上位の方針に沿って、今、自分たちの職場でやらなければならないものは何かを理解し、自ら積極的に取り組んでいきます。活動板を方針管理の道具として、PDCAのサイクルをまわすことにより全員で目標に向かって、生き生きと輝いた職場が醸成されます。
「現場は勉強の場である」「設備や仕事は教材、教室であり、トラブル(故障・不良)は問題集である」をスローガンにモノづくりに強い製造現場を作り上げるのが自主保全活動になります。自主保全活動では、活動板、ワンポイントレッスン、ミーティングを自主保全成功のための三種の神器と称し活動を進めていき、人・設備・活動のレベルアップを図ります※)。
※)関連Webサイト:「すぐ分かる自主保全入門」
⇒前回(第2回)はこちら
⇒次回(第4回)はこちら
⇒本連載の目次はこちら
日本能率協会コンサルティング 取締役 TPMコンサルティングカンパニー長
1984年、日本能率協会入職、日本プラントメンテナンス協会、JIPMソリューションを経て現職。早稲田大学 理工学術院 非常勤講師。日本プラントメンテナンス協会 TPM優秀賞審査員。工学院大学(生産機械工学科)、慶應義塾大学(経済学部)卒業。
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