トヨタとヤンマーの新型船開発は異例の短期計画、「挑戦的でやりがいあった」メカ設計ニュース(2/2 ページ)

» 2016年03月04日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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鍵はFRPのインフュージョン成形

 FRP、炭素繊維、アルミニウムという3種類の素材から構成されるトヨタハイブリッドハルは、FRPハルと比べて7倍の剛性、アルミニウムハルと比べて10%の軽量化を実現している。3素材を組み合わせたハルは、量産タイプの舟艇としては業界初採用になるという。

トヨタハイブリッドハルの船体断面構造 トヨタハイブリッドハルの船体断面構造(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 トヨタハイブリッドハルを実現する上で最も重要だったのが、ヤンマーが国内マリン事業者として初めて認証を得た、FRPのインフュージョン成形である。インフュージョン成形とは、真空圧によって樹脂充てんと含浸を行うクローズドモールドの成形法で、3素材を一体で成形できるメリットがある。

インフュージョン成形の概要 インフュージョン成形の概要(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
船室内部から見た炭素繊維の使用部分 船室内部から見た炭素繊維の使用部分(クリックで拡大)

 トヨタハイブリッドハルでは、最大応力がかかる船底部分や縦補強材の中間材として発泡材を用いることにより軽量化につなげた。また、高価な炭素繊維は、最も力がかかる波を切る部分にだけ使用することでコストを抑えている。

 試験艇のTOYOTA-28 CONCEPTは、このトヨタハイブリッドハルに加えて、トヨタ自動車が「ランドクルーザープラド」に採用しているディーゼルエンジンをマリン向けに最適化した最高出力260psの「M1KD-VH」と、ヤンマーの二重反転プロペラを用いたドライブユニットを搭載。「トヨタの中型アルミ艇『フォーナム』と同等の乗り心地を実現した」(苅田氏)という。

エンジン「M1KD-VH」とヤンマー製ドライブユニットTOYOTA-28 CONCEPT内に搭載されたエンジン 「TOYOTA-28 CONCEPT」のエンジン「M1KD-VH」とヤンマー製ドライブユニット(左)。TOYOTA-28 CONCEPT内に搭載されたエンジン(クリックで拡大)
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