「診察室以外でも身体の状態を診る」iPhoneアプリで臨床研究開始医療機器ニュース

順天堂大学は2016年2月16日、「診察室以外でも身体の状態を診る」をコンセプトに専用アプリを開発。そのアプリを用いた3つの臨床研究を開始した。患者の日常を記録し、臨床研究に反映させることで、より質の高い診断・治療に貢献する。

» 2016年03月03日 08時00分 公開
[MONOist]

 順天堂大学は2016年2月16日、Appleが公開した「ResearchKit」を利用して、「診察室以外でも身体の状態を診る」をコンセプトに専用アプリを開発、臨床研究を開始したと発表した。ResearchKitは、医学研究をサポートする目的で開発されたオープンソース・フレームワークだ。

 病気になった時、限られた診察時間で患者が症状の強さや変動について医師へ上手に伝えることは難しい。患者の日常の様子や、症状の変動などについて、可能な限り正確な情報を集めることができれば、症状が出る前に予防することや、病気の進行を遅らせること、回復を早めたりすることができると考えられる。

 同大学は、iPhoneの高い普及率に着目し、近年注目を集めているウェアラブル端末として用いる研究を始めた。アプリ上での問診への回答データに合わせて、本体に内蔵されたタイムスタンプ機能、GPS、加速度計、ジャイロスコープ、気圧計などで収集された運動・環境データが加わることで、より多面的な病態把握ができるようになる。

 今回、ロコモティブシンドローム/パーキンソン病/気管支ぜん息の3つの分野において、臨床研究を同時期に始めるという。

 ロコモティブシンドローム(運動器症候群、ロコモ)とは、「骨・関節・椎間板・筋肉・神経などの運動器障害により移動機能が低下した状態」のこと。アプリ「ロコモニター」を用いることで、3つのロコモ度テストができる。また、iPhone内蔵のセンサー(一部Apple Watchが必要)で、心拍数・不動時間・歩数などを自動的に記録することにより、日々の運動状況とロコモ度との関連性を把握でき、大規模なロコモ度調査が可能になる。被験者へフィードバックすれば、ロコモ予防や改善支援にもつながる。

 アプリ「iPARKSTUDY」は、パーキンソン病患者の日常生活動作と睡眠の質を調査することを目的とした臨床研究に用いる。患者の生活の質や睡眠の質に関するアンケート調査を行うとともに、iPhone内蔵のセンサーで1週間の日常生活や睡眠を調べ、患者の日常生活における異常を把握できるかどうかを検討。治療方針の決定に役立てる。

 「ぜんそくログ」は、気管支ぜん息の患者へのアンケートによって日本におけるぜんそくの実態調査を行うためのアプリ。今後のぜん息治療の向上に貢献する。低気圧が来ると症状の悪化を訴える患者が多くいるが、症状悪化と気圧の変化がどの程度関連しているかはよく分かっていない。そのため、アンケートによる実態調査の他に、iPhoneから気圧情報を取得し、気圧とぜんそく症状の関連を調査する。

 このように、診察室以外で患者の日常の情報を記録し、臨床研究に反映させることで、将来の診療の質と、患者の生活の質(QOL)の向上に貢献できると同大学では考えている。

photo ロコモニター
photo iPARKSTUDY
photo ぜんそくログ

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