NXPセミコンダクターズは、自動車の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術のセンサーとして用いられている77GHz帯ミリ波レーダー向けに、シリコンCMOSプロセスで製造したトランシーバを開発した。現行のSiGeプロセスを用いるトランシーバと比べて、77GHz帯ミリ波レーダーのさらなる小型化と低価格が可能になる。
NXPセミコンダクターズ(以下、NXP)は2016年1月12日、自動車の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術のセンサーとして用いられている77GHz帯ミリ波レーダー向けに、シリコンCMOSプロセスで製造したトランシーバを開発したと発表した。1チップに送信回路(トランスミッタ)と受信回路(レシーバ)を集積するとともに、パッケージの外形寸法が7.5mm角と極めて小さいことを特徴とする。
この77GHz帯ミリ波レーダーのトランシーバは、実用レベルのプロトタイプがNXPの主要顧客に提供されている。また、Google(グーグル)の自動運転車プロジェクトのために、同トランシーバのプロトタイプを用いた実地試験も実施されているという。
77GHz帯ミリ波レーダーは、主に前方に存在する車両を検知するADASのセンサーとして用いられている。かつて、77GHz帯ミリ波レーダーのトランシーバは、GaAsベースの個別半導体で構成されており、ミリ波レーダーユニットは大型で高価だった。その後、より小型で安価なトランシーバとしてSiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスの適用が提案がされた。これにより77GHz帯ミリ波レーダーの価格低下と採用車種の拡大が進展している。現在、SiGeプロセスのトランシーバICは、Infineon Technologies(インフィニオン)と、2015年12月にNXPとの合併を完了したFreescale Semiconductor(フリースケール)が提供している。
今回NXPが発表したシリコンCMOSプロセスを用いたトランシーバは、77GHz帯ミリ波レーダーのさらなる小型化と低価格化を実現し得るものだ。現在は、フロントグリル部に搭載しているミリ波レーダーユニットを小型化して、車両の側方を検知するセンサーとして利用できるようになり、ミリ波レーダーによる車両全周囲の検知が可能になる。消費電力も、従来のSiGeプロセスのトランシーバと比べて40%低減できるとしている。
NXPは、フリースケールとの合併を発表する以前から、車載ミリ波レーダー用デバイスを開発していることをアナウンスしていた(関連記事:GMの「キャデラック」に採用されたNXPの車車間通信用IC、決め手はセキュリティ)。フリースケールも将来的にシリコンCMOSプロセスへの移行を計画していたが、今回発表した技術は合併前のNXPの取り組みの結果となる。ただし、このトランシーバを用いたADASを制御するマイコンは、SiGeプロセスのトランシーバとの組み合わせで実績を持つフリースケールの製品を用いている。
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