77GHz帯ミリ波レーダー向けのMMICを提供するInfineon Technologies(インフィニオン)は、製品世代を進めるごとにシステムコストを30%低減する目標を立てている。既に現時点で「単眼カメラよりも77GHz帯ミリ波レーダーの方が安価になっている」という顧客もいるという。
インフィニオンテクノロジーズジャパンは2015年11月5日、東京都内で会見を開き、ミリ波レーダー用IC(MMIC:Monolithic Microwave IC)を中心とする車載センサー事業の状況について説明した。会見には、ドイツ本社Infineon Technologies(インフィニオン)で車載センサー事業のトップを務めるオートモーティブ事業本部 センス&コントロール バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのラルフ・ボナフェルド氏が参加し、「自動運転技術の開発が進展する中で、当社が優位性を持つ77GHz帯ミリ波レーダーの需要は拡大していく」と強調した。
インフィニオンの2015年度(2015年6月期)のうち第1〜第3四半期合計の売上高は41億9700万ユーロとなっている。このうち車載半導体事業(ATV)は41%を占め、主に民生機器向けを中心とするPower Management&Multimarket(PMM)や、産業機器や電力機器向けのIndustrial Power Control(IPC)などを上回った。日本法人であるインフィニオンテクノロジーズジャパンの車載半導体事業も年間15%の成長を計画しているが、その中で最も売上高が大きいのが車載センサーだ。
インフィニオンの車載センサーの2014年における世界シェアは11.5%で2位(Strategy Analytics調べ)。Robert Bosch(ボッシュ)が21.1%で1位だが、「ボッシュは自社の車載システム向けの比率が高く、市場にオープンに供給しているという意味ではインフィニオンがトップになるだろう」(ボナフェルド氏)という。
同社の車載センサーの基礎技術は、MEMSを用いた圧力センサー、磁気センサー、そしてミリ波レーダーに用いるMMICから構成される。圧力センサーは、タイヤ空気圧監視センサー(TPMS)やサイドエアバックの側突検知などに、磁気センサーはABSの速度センサーやパワーウィンドウの位置を検知するポジションセンサー、電流センサーなどに適用されている。
圧力センサーや磁気センサーも好調だが、さらに大幅な成長が期待されているのがミリ波レーダー向けのMMICである。インフィニオンは、長距離の検知が可能な77GHz帯のミリ波レーダーと、広い範囲の検知を得意とする24GHz帯のミリ波レーダーにMMICを供給している。
現在、自動車の運転支援システムのセンサーとしてミリ波レーダーの採用が広がっており、これらの運転支援システムは、自動車メーカー各社が開発を加速させている自動運転車の中核技術にもなっている。
ボナフェルド氏は「自動運転技術は、単機能の運転支援を行うレベル1から、ドライバーが関与する必要のない完全自動運転のレベル5まで分かれる。現在は、自動駐車機能や車線維持機能といったレベル2に当たる自動運転技術の搭載が広がっているが、今後はレベル3、レベル4とより高いレベルになっていくだろう。レベルが上がるほど、必要とされるセンサーの数は増えていく。もちろんミリ波レーダーの搭載数も増えることになる」と語る。
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