広い視野の確保も新型プリウスのデザインテーマの1つだ。カウル高さを62mm下げ、室内からワイパーを見えにくくすることにより、前方の視界を広げた。前方だけでなく、斜め前や横、後方の見やすさにも気を配っている。
先代プリウスは死角を減らすため車両前側のAピラーと車両後側のCピラーに三角窓が付いていたが、新型プリウスではなくなっている。「三角窓はそこから外が見えるという安心感があるかもしれないが、実際は十分な視界ではなかった」(児玉氏)というのが理由だ。運転席と助手席の横の窓は「ギリギリまで大きくしている」(同氏)。パワーウィンドウでドアガラスを全てドア内に収納できる限界のサイズだという。また、リヤドアのガラスは、Cピラーの骨格を見直すなどして、ドライバーから見通せる開口幅を先代モデルよりも160mm拡大した。
一般的な車両デザインでは、当初のスケッチが量産モデルになるまでの間に、変更や省略が行われる部位は少なくない。新型プリウスに関しては「空力特性と視界の提案が一貫して残った」(同氏)という。一方でフロントビューとリヤビューは何度もやり直した。一目でプリウスと分かるシンボリックなデザインで先進機能が人の記憶や直感で分かることを目指したデザインコンセプト「ICONIC Human-tech」の下で「Humanとtechの要素をどう見せるか議論を重ねた」(同氏)。
児玉氏は新型プリウスのデザインを振り返って「環境性能を向上し、絶対に損ねてはいけないという制約のもとでエモーショナルな表現を追求するのはとてもやりがいがあった」と述べている。
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