医療機器開発者向けに、医療情報システムに代表される医療ITの歴史的背景や仕組みを概説する本連載。第4回は、地域医療のハブを担う地域医療連携システムを取り上げる。
本連載の第2回で紹介した臨床情報システム(CIS)や、第3回で紹介した電子カルテシステムが、医療施設の枠を越えて、地域レベルへと連携対象を拡大していったのが地域医療連携システムである。
米国では、医療情報交換基盤(HIE:Health Information Exchange)と呼ばれている。医師、看護師、薬剤師など医療機関の専門職と患者にとって、適切かつセキュアに、電子化された患者の生体医療情報へのアクセスや共有ができ、医療サービスの迅速性や品質、安全性、費用対効果の向上に資するシステムである(関連情報)。医療機関同士で患者情報を共有することによって、再入院や医療ミスの回避、診断の向上、重複検査の削減を実現できる点がICT利活用のメリットだ。
保健福祉省(HHS)傘下の国家医療IT調整室(ONC)は、医療情報交換基盤を以下の3つに分類している。
またONCは、医療情報交換基盤の相互運用性のための要件(ビルディングブロック)として、以下の5つを掲げている。
参考までに図1は、ONCが提供している、相互運用性に関するオンライントレーニングプログラムより、5つの要件を示したものである(関連情報)。
2011年9月にONCが公表した「連邦ヘルスIT戦略計画2011−2015」では、電子カルテと並んで医療情報交換基盤の導入/普及が第1の目標に掲げられた(関連資料、PDFファイル)。さらに、本連載第3回で取り上げた、米国オバマ政権による電子カルテ導入支援策「Meaningful Use Stage 1」(関連情報)に続く導入支援策「Meaningful Use Stage 2」では、医療情報交換基盤が、電子カルテで収集された医療データの2次利用におけるハブとして期待されている。
ただし、医療情報交換基盤がハブ機能を果たすためには、データソースとなる各医療機関の電子カルテシステムのレベルで相互運用性が確保され、セキュリティ/プライバシー対策の要求事項が満たされていることが前提条件となる。臨床現場でデータの入出力デバイス機能を担う医療機器やウェアラブル端末が、モノのインターネット(IoT)を介して、電子カルテや医療情報交換基盤と連携するためには、相互運用性とセキュリティの確保が必須要件だ。
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