医療機器開発者向けに、医療情報システムに代表される医療ITの歴史的背景や仕組みを概説する本連載。第2回は、チーム医療現場を支える臨床情報システム(CIS)を取り上げる。
第1回で紹介した、基幹業務を担う病院情報システム(HIS:Hospital Information Systems)と連携しながら臨床現場の医療プロセスを支えるのが臨床情報システム(CIS:Clinical Information Systems)だ。
病院には、診療部門、看護部門、臨床検査部門、放射線部門、手術部門、薬剤部門、栄養部門などのさまざまな部門があり、それぞれの部門に所属する、医師、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、薬剤師、管理栄養士・栄養士といった個々の専門職の業務プロセスにひもづく形で臨床情報システム(CIS)が発展してきた。CISの全体像をふかんすると図1のようになる。
病院にはさまざまな診療科が存在するが、診療部門共通で利用されるものに、オーダーエントリーシステム(オーダリングシステムとも言う)がある。欧米諸国では、医師による電子オーダーエントリー(CPOE:Computerized Physician Order Entry)システムと呼ばれている。
病院では、医師が紙の伝票に依頼情報を記入して、関係する部門に送り、各部門のシステムに入力するやり方が一般的だった。このやり方では、物理的な時間と労力を要し、入力ミスのリスクが生じる。
そこで、医師がコンピュータ端末から依頼を直接入力することにより、各部門で依頼情報を共有できるように効率化・自動化したシステムが、オーダーエントリーシステムだ。主な機能としては、利用者認証、患者選択、オーダー発行/修正/取消、オーダー履歴/参照、ステータス管理などがある。日本では、1980年代から導入が始まり、1990年代のクライアント/サーバ型システムへのダウンサイジングを契機に普及してきた。
オーダーエントリーシステムは、患者の診察や検査の予約の流れとひもづいており、患者向けにスケジュール管理機能を、各部門向けに作業予定リストを提供する予約システムと連動する必要がある。また、医師によるオーダーを起点として、処方/注射オーダーは薬剤部門、検体検査オーダーは臨床検査部門など、対応する部門の業務フローと連携するので、部門システムとの連動も必須要件である。
部門システム側では、受信したオーダー情報をもとに、部門レベルで専門的なサービスが提供された後、実施情報がオーダーエントリーシステムのデータベースに反映され、医療費請求業務を担う医事会計システムにも伝達される仕組みになっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.