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» 2015年09月04日 10時00分 公開

ZFとTRWの統合が生み出すメガサプライヤとしての真価クローズアップ・メガサプライヤ(4/6 ページ)

[川端由美,MONOist]

「データフュージョン」による運転支援システムの進化

 今回の説明会で取り上げた4つの分野のうち、最もフォーカスすべきなのが、ZFとTRWの合併によって生み出される安全技術になるだろう。高性能レーダー、処理能力の高いカメラ、それらを統合制御するセーフティドメインECUが1つの企業内で全てそろうことになるからだ。

セーフティドメインECU セーフティドメインECU(クリックで拡大)

 テスト車が用意されたのは、AEB(オートマチックエマージェンシーブレーキ)と、完全停止まで対応するACC(アクティブクルーズコントロール)、データフュージョン(一般にはセンサーフュージョンとも呼ぶ)を搭載するテスト車である。前方を検知するレーダーとフロントカメラからの情報を基に、走行する車両の周囲の状況をリアルタイムで高精度に把握する。

AEBのデモンストレーションの様子 AEBのデモンストレーションの様子(クリックで拡大) 出典:ZF

 時速40kmで走行している状態から、障害物を検知したときに自動でブレーキをかけるAEBについては、徐々に普及が進みつつあることもあって新たな驚きはなかった。一方で、続くESA(エマージェンシーステアリングアシスト)を備えるテスト車については驚きを禁じ得なかった。時速50kmで対象物に突っ込んでいき、ブレーキを踏みたくなるのをこらえて、脇見運転よろしくノーブレーキで突っ込んだ後、急な操舵で衝突を避けるのだ。「ぶつかる!」と思う距離で自動ブレーキが掛かり、「もうダメ! 怖い!」と目をつぶりそうな段階で、急操舵が行われて衝突を回避する。

ESAのデモンストレーションの様子 ESAのデモンストレーションの様子(クリックで拡大) 出典:ZF

 レーダーは広い範囲で動いているものを検知できるのに対して、カメラは動いていないものも含めて相手がどんなものか正確に見ることができる。これらレーダーとカメラからのデータを30ミリ〜40ミリ秒ごとに統合している。センサーごとの得手/不得意を補完するように、得られる情報を統合して衝突を回避する操作につなげるには、高度な制御が必要になる。簡単に言ってしまえば、センサーと制御プログラムによってクルマを動かすチームプレイなのである。

 実際のところ、前方の障害物を検知した場合には、ESC(横滑り防止装置)とABS(アンチロックブレーキシステム)が協調して、クルマを安全に止めようとする。さらに真っすぐ走っていては衝突すると判断すると、急ハンドルを切って衝突を回避する。同社では、操舵速度を高めたり、全方位を検知することで左右の操舵方向を選んだりするなど、さらに高度なデータフュージョンによって、より厳しい状況からの衝突を回避することを目指している。当然、危険を予知して、どう行動するか判断し、制動と操舵を行うという一連の行動にかかる時間は、人間が行うよりも確実に短いから、安全性の向上に大きく貢献することが期待できる。

 レーダーやカメラを異なるサプライヤから購入して活用することもできるが、ZFとTRWの製品で統合すれば、独自開発のアルゴリズムによる反応速度の高度化が可能で、データーフュージョンのシステム開発時間を縮めることができるとしている。

 リヤアクスルのトーアングルをフレキシブルに変更できる操舵補助機構であるアクティブキネマティックコントロール(AKC)は、既にPorsche(ポルシェ)「911」やAudi(アウディ)「Q7」に採用されているもの。リヤアクスルで操舵につながる動作が検知されると、電子制御のアクティブトラックアクチュエータが作動することにより、前輪のステアリング角が後輪のアクティブ制御によってアシストされて、乗用車のステアリング操作時の機敏性や安定性、快適性を改善する。リヤアクスル中央部にセントラルアクチュエータを1基備える方式の他、ポルシェ911で採用する後輪の左右のサスペンション内に小型アクチュエータを合計で2基搭載する方式がある。

AKC(左)とAKCを搭載するテスト車(右)(クリックで拡大) 出典:ZF

 具体的には、時速60km以下での走行中では、後輪と前輪は反対方向に操舵されて、ホイールベースを短くするのと同じ効果となる。実際に試乗してみると、ボディサイズから想像するよりも、操舵性が高く、コーナリングを機敏にこなす印象だ。最小回転半径が最大で10%も減り、町中での取り回しもしやすくなる。

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