この理由として、やはりバッテリーを搭載するクルマならではの、デメリットをメリットに転換するテクニックが光ります。
まずバッテリーを車両の後方に搭載することで、前後の重量配分が50:50に近づきました。
しかも、この搭載位置にもこだわりがあるのが面白いのです。
エクストレイル ハイブリッドのバッテリーは、後席の後ろにある荷室床下に搭載されています。荷室を開けて、フロア部分(ラゲッジアンダーボックス)を持ち上げたら見える、スペアタイヤに3分の1くらい覆いかぶさるようにして出っ張っている板状のモノがそれです。
こうして後席の後ろ側に寝かせて配置することで、ただでさえ腰高なSUVながら、なるべく重心を下げ、重量配分を理想的にしていることがまず1つ。
それから、このバッテリーを後方衝突から守るために、バッテリーの前後に補強バーを渡してあるのですが、それをフレームに直結させていることが結果的に剛性の向上にもつながっているといいます。
ほら、チューニングカーでも見たことのある人、いらっしゃるでしょう。エンジンルームにバーを渡して(ストラットタワーバー)補強しているようなイメージです。
さらにこの補強バーの後端はクルマの車軸上に来るように設計されていて、もしもの後方衝突の際もこのバーと車軸でバッテリーを守るんですって。
いやいや、だったら時代遅れなテンパータイヤ(緊急用のスペアタイヤ)なんかやめて、その部分にバッテリー積んだら話はもっと簡単やったんやおまへんか、とお話ししたら、日産自動車 第二製品開発本部 車両開発主管の東倉伸介氏はおっしゃいました。
「だってエクストレイルはハイブリッドの前に超オフロード車ですもん! やっぱりハードな走破性に応えるためには、パンク補修材では申し訳ない」
そう、そのために、本当は燃費に大幅に寄与する空気抵抗を減らすべく車高をできるだけ下げたいところを、最低地上高195mmという数字を守り(東倉氏いわく、「燃費に振ったヤワなSUVにしたくない」とのこと!)、タフな日常ユースにも耐えうるようにトランクスルーで荷物を搭載できるように薄型バッテリーにこだわったのだとか。
しかも純正タイヤはエコタイヤでなく燃費に不利なオールシーズンタイヤを選択、どこまでもお客さまがエクストレイルに求めるモノに貪欲なんですよ。
なんかちょっと、私の大好きな胸アツエピソード満載の人情カーやないですか!
こうしてFF用のハイブリッドシステムがとうとう登場したことによって、これで最近ちょっと元気がなかった日産から、期待の新型車が今後も出てくる可能性が高まってきました。
とはいえ、技術者に聞いても「さあ、どの車種に搭載するかは私たちもまだ聞いていないんです」と曖昧。しかし、今やほとんどのラインアップをFF車が占める同社において、せっかく新規開発したこの技術を転用しないテはない! 早速スパイショットのようなスクープも既に飛び交ってますしね!
国産車について、一般ユーザーの皆さまから好評を漏れ聞くことが多くなりました。
「マツダのデザインが気になる!」
「スバルのアイサイトなしでは、もう運転したくないんだよね」
「スズキのアルト、レトロかわいい!」
「トヨタはラインアップに厚みが出た」
などなど。
枚挙に暇がないとはまさにこのことで、やはり国民感情としても、自国産(最近は逆輸入的なモノもあるんですけど)のクルマにアツい視線を送っているのはとても喜ばしいことだと感じます。
だけど、そんな中でもなかなか名前が上がらない自動車メーカーだった日産。
まだまだ今年(2015年)も新車のウワサを聞くことが少ないメーカーではあるんですけど、ちょっとこの辺で底力を見せて欲しいものです。
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